安倍晋三元首相の国葬を巡って与野党で賛否が割れている。自民党の茂木敏充幹事長は19日の会見で国葬を執り行う法的根拠について「内閣府設置法で内閣が国の儀式を所管する、と明記されている。政府が閣議決定を根拠として国葬を行うことは法律上も全く問題ない」と明言した。その上で「国葬とするのは、極めてふさわしい適切なあり方だ」と述べた。

この日も国葬に反対する立憲民主党の泉健太代表は会見で「多くの国民の評価が、さまざまに分かれる中で岸田政権が拙速に決めてしまった」などと閉会中審査を求め、国会で議論すべきとした。だが、茂木氏は野党の反対論について「国民の認識と、かなりずれているのではないか」との見解を示した。公明党の山口那津男代表も岸田文雄首相に「首相の決断を評価する」と賛意を示した。

野党も賛否両論である。共産党、れいわ新選組、社民党が国葬反対とする一方で、日本維新の会・松井一郎代表は「世界のリーダーから見ても傑出した首相だったと思うので反対しない」とした。松井氏は国葬の意義と理由を国会で丁寧に説明する必要があるとし、国民民主党の玉木雄一郎代表も国葬に理解を示した上で「反対の国民もいる。政府は国葬の意義や法的根拠、基準を丁寧に説明すべきだ」と指摘した。

立民の泉氏は2020年の故中曽根康弘元首相の「内閣・自民党合同葬」を例に「9600万円という経費については国民の側から数多くの疑問が上がり、その透明性はこれまでにも増して求められている」などとした。また合同葬に際し、文科省が国立大などに弔意を表すよう通知した先例から「国が関与するからといって行政機関や教育機関に弔意表明の要請など強制を伴うような、あるいは圧力を伴うようなものがあるべきではない」と懸念を示した。国葬を巡る議論はさらに熱を帯びそうだ。