チューナーレステレビが人気となっている。テレビ放送の受信機が搭載されておらず、テレビ放送を視聴することはできないが、ネット経由で有料のネット配信動画やユーチューブ、ゲームなどに特化したモニターとして使用できる。またNHK受信料が必要ないことからも注目されている。各社から新機種が続々と発売され、いずれも想定以上の売れ行きと、今後の市場拡大が注目されている。

チューナーレステレビの新発売が相次ぎ、各社いずれも売れ行きは好調だ。ゲオホールディングスは7月22日から全国579店舗のゲオストアで4K対応のチューナーレステレビ43V型(3万2780円)、50V型(3万8280円)を発売し、同31日までの10日間で計1000台以上を販売した。同社では2機種で6000台の販売を見込んでいるが出足は好調だ。

チューナーレステレビは米グーグルの基本ソフト(OS)を標準搭載し、「チューナーレススマートテレビ」とも呼ばれる。ネット動画の視聴に必要な接続端末(ファイヤースティックTVなど)を別に購入する必要がない。同型テレビと比較すると接続端末費を含め、1万円ほど低価格なイメージ。「テレビを見ない、という人も多く、世の中の流れが変わりつつあると思う。チューナーレステレビにすると価格が抑えられることもポイント」(ゲオ・リテール商品1課家電バイヤー松岡良房氏)。

家電メーカーのドウシシャは6月下旬に24~40型のチューナーレステレビ3機種を販売し、7月下旬には50型を投入した。「まだ集計されていませんが、想定以上の売れ行き」(同社広報)。また家電量販店のエディオンも6月中旬に43型チューナーレステレビを限定50台、ネット販売して完売している。

受信機がなく、NHKは視聴できないため、放送法第64条で定められたNHKの受信料は必要ない。また民放の配信アプリ「TVer(ティーバー)」を経由すれば、民放番組の視聴も可能だ。

ネットの動画配信の視聴者は増加中だ。ICT総研が昨年8月に発表した「2021年有料動画配信サービス利用動向に関する調査」によると23年には定額制サービスの利用者は3710万人に達すると予測している。

経済アナリストの森永卓郎氏(独協大経済学部教授)は「ネットしか見ないと割り切る人が増え、視聴スタイルがガラリと変わっている。時代を反映し、時代の隙間にスポンと、はまった商品」と分析する。

大手家電メーカーは本格的に参戦しておらず、今後のチューナーレステレビ市場が、どこまで拡大するかは見通せないが販売各社では「市場はさらに拡大する」と想定し、新商品の投入を予定している。森永氏は「転換期に咲いたあだ花的な商品。通常のテレビを逆転するかは微妙だと思う」とするが、若い世代を中心に認知されている受信機能のないテレビの発信力と注目度は、まだまだ高まりそうだ。【大上悟】

■ドン・キホーテ先行

チューナーレステレビの発売で先行したのが大手ディスカウント店「ドン・キホーテ」だ。昨年12月に24型(2万1780円、税込み)と42型(3万2780円、同)の2種類を計6000台発売し、約1カ月で完売した。今年2月、6月と追加販売し、2月分は完売している。「テレビのようでテレビじゃない!!」のうたい文句で注目を集めた同社では「想定していた以上のニーズがあることが分かった。さらに大きなサイズを含めた新商品を近々に発表する」としている。

◆NHKの受信料 放送法第64条(受信契約及び受信料)1項では「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定めている。地上契約は12カ月前払いで1万3650円(同衛星契約は2万4185円)。チューナーレステレビは放送を受信する機能を有しない設備とされる。