今年で発売開始50周年を迎えた「プロ野球チップス」野球カード(カルビー社、本社・東京都千代田区)は、子どもから大人まで幅広いコレクターに愛され続けている。09年からカード担当を務めている同社マーケティング本部ポテトチップスチーム三井剛さん(52)が、企画や人選への思いを語った。3月の2022第1弾では長嶋茂雄氏、王貞治氏の復刻カードが大人気。9月に発売開始予定の第3弾の復刻カードには松井秀喜氏、松坂大輔氏らの登場に注目だ。

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「日々のスポーツニュースや、毎週発売される雑誌をチェックして、誰が活躍しているかの情報を得ています」。三井さんは、常に目を光らせている。

近年は1年のうち、3月(第1弾)6月(第2弾)9月(第3弾)がカード改変期。締め切りは約2カ月前だ。人選後、各プロ球団担当者に申請を出す。「ベテランに寄りすぎていた時に『今、若手を推しているから入れ替えてほしい』などの要望をいただくこともあるんです」と明かす。

今年の第1弾には50周年企画として長嶋茂雄氏、王貞治氏の復刻カードが登場。「過去2万種類以上ある歴代カードの中で、発行枚数1、2位は長嶋さん、王さん。いまでも人気は健在でした」。ネットオークションサイトでは「長嶋カード」に9万円の売り値がついているほどだ。

22年4月10日、ロッテ佐々木朗希が完全試合を達成した日には「実はマリンスタジアムに行っていたんです」。佐々木朗も登場予定だった6月の第2弾の締め切りは過ぎていたが、急きょ、完全試合のスコアボードを背に笑顔の写真に差し替えた。ギリギリだったが、衝撃を目の当たりにしたからこその執念だった。

次なる第3弾は-。「各球団ごとの復刻カード。松井秀喜さん、松坂大輔さん、野村克也さん、衣笠祥雄さん、星野仙一さんなどが目玉です」。大リーグから広島に移籍直後の秋山翔吾も滑り込みセーフ。「村上宗隆選手の5打席連続ホームランは間に合わなかったんです」と無念の表情を浮かべた。

思い出の1枚は西武09年ドラフト1位・菊池雄星投手。毎年第1弾は開幕前のため、新人や移籍選手の起用は見送ることが多いが、カード人選担当就任後、最初のドラフト最注目だった菊池を10年第1弾に抜てき。「西武球団さんがOKを出してくれるか不安だったのですが、プレー写真はなくても、カレンダー使用などで撮影したものを提供していただいたんです」。

カード担当14年目。子どもがレジを通ってすぐにカードの封を開ける様子を見た時に、あらためてやりがいを感じる。「開ける瞬間が一番の楽しみだと思う。思惑通りではない選手が出ても、データなどを全部読んでみて、こういう選手なんだと理解すると、試合を見ることが1つ楽しくなる。そんな一喜一憂出来るカードを作り続けたいです」。カードで野球界盛り上げの一翼を担っている。【鎌田直秀】

◆プロ野球チップス カルビー社が73年に発売開始。71年発売開始のカード付き菓子「仮面ライダースナック」に続く「プロ野球スナック」(中身はサッポロポテトバーベQ味)として誕生。まもなく、ポテトチップスうすしお味に変更して名称変更。プロ野球選手のカード付き菓子として人気に。95年の「Jリーグチップス」が好評で、同じ生産ラインだったプロ野球チップスが販売出来なかった時期は、関連会社の「プロ野球スナック」(中身はポップコーン)に。約5年前にもジャガイモ不足で数カ月間休売した。20年はコロナ禍で開幕が遅れ、写真入手困難に。カードは基本のレギュラーカード(各球団6人)スターカード(同2人)、名場面や大記録の企画物カードなどがある。発行は2万種類を超え、累計枚数18億枚超。