環境省は1日、警察庁、農水省、林野庁との「クマ被害対策等に関する関係省庁連絡会議」を開き、「22年度は直近5年の同時期と比べてもっとも少ない出没件数のペースではあるが、人の生活圏での出没が多い傾向にある」との見解を示した。

ツキノワグマの出没件数が近年で最多だった20年度の7月末時点の人身事故件数は30件だが、22年度は40件。例年10月に出没、被害件数がピークになるため、22年度の出没数が全国で突出している岩手県と秋田県を中心に、警戒を強めた。

講師を務めた東京農大で動物生態学を専攻する山崎晃司教授は「10月ごろは冬眠前にエサを食べる時期。9月中旬以降にドングリの量が少ないと人の生活環境に来る」と説明した。個体数は減っていることから、種の保存と捕獲のバランスの重要性を強調。「1番大事なのは地域集団での個体数把握が大事。奥山に住んでいるクマの生息状況が把握出来ているのであれば、手前(人里に近いところ)の排除地域で捕獲していいよねとなる」とした。自身の研究対象でもある東京・奥多摩町に生息するクマの行動事例を出し「特にオスは繁殖を目的に長野の千曲川や、埼玉の秩父まで移動している個体がある」と行動範囲が広い特徴も公表。「森があればクマがいると思って」と注意を促した。【鎌田直秀】