宗教にあらためて関心が高まりつつあります。そもそも日本の宗教は今、どんな状況でしょうか。宗教法人を所轄する文化庁は、毎年末に「宗教年鑑」(文化庁HPで閲覧可)をまとめ、包括宗教法人・団体(宗派、教派など)、包括法人の傘下にある被包括宗教法人(神社、寺院、教会など)、教師(仏教では宗門が認定した僧侶などにあたる)、信者、包括法人に入っていない単立宗教法人などの統計を報告しています。

調査は、文化庁が包括法人と単立法人に調査票を送り任意で協力する形で行われ、いわば自己申告。そのため、例えば氏子と檀家が重なるなどして、信者の総数が日本の総人口より多くなったりしています。参考としてみてみると、「令和3年版」(20年末時点)で、被包括と単立を合わせた単位宗教法人数の内訳は、神道系が8万4444法人(46・9%)、仏教系7万6887法人(42・7%)、キリスト教系4747法人(2・6%)、諸教1万4069法人(7・8%)となっています。前年比では、単位法人数、信者数はキリスト教系が微増し、ほかの系統は減少。教師数は仏教系だけが微増となっています。

文化庁によると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は「キリスト教系」と回答しているため、宗教年鑑では「単立のキリスト教系」に分類されていますが、1946年創業のキリスト新聞社が48年から発行する国内唯一の統計資料「キリスト教年鑑」には89年版以降、掲載されていません。同社の松谷信司社長は「当時、主要教派教団が、彼らはキリスト教ではないと公に表明し、購読者からのクレームなどもあって判断しました。お墨付きを与えない、偽装を阻止したいからです。老舗の年鑑に載っていることで、ちゃんとした団体ですと名乗るなど、偽装させることにもなりますから」などと説明しています。

大半の宗教は多くの人々を支えてきましたが、人口減、都市への流出、後継者問題などの背景もあり、状況は大きく変化しつつあります。例えば宗教年鑑でここ10年間をみると、全体の被包括法人数や信者数は減少しており、どこの包括法人にも入らない単立法人だけが増加しているのも特徴の1つです。

浄土宗僧侶(京都・正覚寺住職)でジャーナリストの鵜飼秀徳さんは「困窮したり後継者がいなくなったりしても、宗教法人の解散の手続きは大変煩雑なため、なかなか進んでいません。合併や兼務などのほか、誰も管理しない空き寺(空き神社)として放置されることも多く、それを不活動宗教法人といいます。寺院減少の未来予測は、数字以上に深刻です」と説明します。

その上で、宗教法人は法人税や固定資産税が免除のため「不活動法人はブローカーや反社会的集団などに狙われて、宗教法人格を悪用されるケースが増えています。仏教界も警戒しています」と指摘。不活動法人を隠れみのにラブホテルチェーンを展開し、売り上げをお布施扱いにして所得隠しする例や、海外のブローカーが買収し産業廃棄物の仮置き場にする動きなどもあったそうです。

一方、宗教法人の単立化が増えていることについては「コンビニがフランチャイズから離脱し、独立することに似ています。仏教寺院の場合、包括法人から離脱すれば上納金を支払う義務はなくなり、儀式や運営なども伝統に従わなくてもよくなります」と説明しつつ「宗派の看板を下ろすため、新宗教の扱いを受けたり、後継者育成がしにくくなるリスクもあります」とも指摘しています。