安倍晋三元首相の国葬(27日、東京・日本武道館)まで残り6日に迫った21日、国葬反対の逆風が吹き荒れている。この日、自民党の村上誠一郎元行政改革担当相(70)が国葬欠席を表明し、与党の閣僚経験者が欠席するという異例の事態となった。同日早朝には、首相官邸の近くで国葬反対を訴えたとみられる男性が焼身自殺未遂を起こしており、国葬を巡って緊迫感が増している。

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国連総会演説のため訪米中の岸田首相に身内から反旗が翻った。元閣僚の自民党・村上議員が国葬への疑問を投げかけ、欠席を表明した。自民議員で欠席を表明したのは初めて。最大派閥の安倍派からの反発もあり、幹部が対応を協議するなど党内に波紋が広がった。

20日に党本部で欠席の意思を示した村上氏の事務所関係者によると、「反対が多い中、なぜ強行するのか。安倍氏の名誉になるのかどうか。佐藤(栄作元首相)氏や中曽根康弘元首相が国葬でないのに、なぜ今回(安倍氏)は実施するのかという問題もある」と指摘したという。同時に「英国のエリザベス女王の国葬と違い、皆が心から賛意を示しているわけではない」と指摘。「財政、金融、外交をおかしくした」とも語った。

自民安倍派の萩生田光一政調会長と世耕弘成参院幹事長は21日、遠藤利明総務会長と党本部で協議した。関係者によると、村上氏が「国賊」との表現を使い安倍氏を批判したと一部で報じられたことを巡り、萩生田、世耕両氏が村上氏の処分の検討を求めた。安倍派ベテランは「欠席するのは自由だが、度が過ぎている」と不快感を示した。

共同通信が17日と18日に実施した世論調査では国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が計60・8%で「賛成」「どちらかといえば賛成」の計38・5%を上回った。国葬当日は開始予定の午後2時に合わせ、国会議事堂周辺で大規模な国葬反対デモが見込まれる。身内にまで背を向けられ、日に日に強まっていく逆風を本番までセーブできるのか。残された時間は少ない。