世論を二分した国葬を強行した岸田文雄首相を、難局が待ち構える。

国葬「賛成」を上回った「反対」の声には安倍晋三元首相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と永年にわたる関係性の根深さがある。10月3日に召集予定の臨時国会で野党が追及する最大のテーマは旧統一教会と政治を巡る問題だ。

立憲民主党の岡田克也幹事長は「旧統一教会追及国会」と位置付けている。安倍氏の調査について岸田首相は「亡くなられている今、限界がある」と否定的だが、国葬を欠席した立民の泉健太代表は「最も関係が深い自民党において、まだ調査が不十分。まずは安倍元総理の事務所。さまざまな会合に出席していた情報があるはず」と事実関係の調査を強く求めた。

自民党最大派閥の安倍派(97人)の前身を率いた細田博之衆院議長も教団との接点が浮上する。議長就任によって党本部が実施した聞き取り調査の対象外だったが、野党側は細田氏への調査も迫る方針だ。

安倍派議員と旧統一教会の関連団体との接点が数多く、指摘される中で自民党は月内にも旧統一教会との接点について追加発表を行う予定だ。だが、山際大志郎経済再生相ら現役閣僚も教団の関連団体の会合に出席するなど新たな事実が相次ぎ、発表後に新たな疑惑が浮上する懸念もあり、「自己申告だけでは限界がある」(閣僚経験者)など党内から調査手法に疑問の声が上がっている。

また政府が概算総額16億6000円と公表した国葬費は全額が国費負担となる点も反発を招いた。当初は最大6000人規模とした参列者は最終的に4300人程度となったが、民間警備費などの増額で総額が膨らむ懸念は消えない。この日、松野博一官房長官は「精査には一定の時間がかかる。できる限り早期に取りまとめて示したい」と述べたが、概算総額を上回れば新たな論争となる。

旧統一教会、国葬を巡って内閣支持率は急落を続ける。国葬強行によって支持率の回復どころか、下降線の可能性もある。岸田政権が正念場を迎える。