JR東日本管内の駅弁NO・1を決める「駅弁味の陣2022」が10月1日に開幕し、11月30日までウェブ投票が続く。今年は10月14日に鉄道開業150年を迎えたメモリアルイヤー。150周年記念弁当や、味や掛け紙の復刻版が数多く登場した。まだまだ新型コロナの影響はあるが、海外からの訪日客の規制が緩和され、11日からは「全国旅行支援」も開始。1885年(明18)7月16日に宇都宮駅(栃木)で初めて販売したとされる日本の伝統文化「駅弁」に注目だ。

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「古きを継承して伝えていき、進化させていくことが駅弁の役目」。そんな使命を背負うのは、栃木県宇都宮市の弁当メーカー松廼家(まつのや)の星野至紀(ゆきのり)営業部長(47)だ。

1872年(明5)10月14日の鉄道開業から150年。「150周年には発祥というワードが大事だと思った」。JR東日本によると、黒ごまをまぶした梅干し入りおにぎり2個とたくあん2切れを竹の皮に包んだ弁当を宇都宮駅で5銭で販売したのが駅弁の発祥とされている。松廼家は今回、「おにぎりとたくあん」をモチーフに栃木県の名産をふんだんに取り入れた「駅弁発祥の地宇都宮御弁当」を新たに商品開発した。

おにぎりの1つは、同社伝統の玄米に、うるち米と大豆を加えて炊き込んだごはんに、名産「宮みそ」をぬって炙った、みそ焼きおにぎり風。もう1つは県水産試験場で養殖された「プレミアムヤシオマス」のほぐし身に刻んだ岩下新ショウガを混ぜ、高菜で巻いた。おかずも霧降高原牛、かんぴょう、湯葉など栃木の味が並ぶ。「個人的には『ナスの乳茸(ちたけ)だし含み煮』に思い入れが強いんです」。郷土料理の乳茸でだしをとった逸品だ。

もう1つの出品は昭和20年代の覚え書きが残っていた「復刻版とりめし」。煮物の煮方などは大きく変わらなかったが「しょうゆが濃いめで鶏に焦げ目がつくのが、おいしさになっている」。掛け紙の色も赤はそのまま使用し、灰色をブルーグリーンに変えて明るくした。栃木では今月1日から「いちご一会とちぎ国体」が開催され、全国の方々が駅弁を食した。「『これほどまでにまとまった弁当は初めて』などのお褒めの言葉をいただいています」と手応えも得ている。

全58弁当中、150年を記念したのは28。中身もしくは掛け紙のみの復刻は18弁当ある。1964年(昭39)東京五輪開催年の販売当時と同じ2段重ね仕様の「復刻チキン弁当」を再現した日本ばし大増(東京都荒川区)の担当者は、「から揚げは当時のレシピだと時間がたつと固くなるので漬け込み時間や揚げ時間を工夫しました」と苦労も明かす。大船軒(神奈川県鎌倉市)の「復刻伝承鯵の押寿し」は1913年(大2)から100年以上販売しており、今回は大正時代の掛け紙を再現して趣深い。

関根屋(秋田市)の「秋田駅開業120周年記念秋田のターミナル弁当」、神尾商事(新潟市)の「上越新幹線開業40周年記念弁当」、荻野屋(群馬県安中市)の「北陸新幹線25周年記念釜めし」などは独自の記念年をアピール。「全国旅行支援」などを活用した旅行客にとっても旅の記念弁当となりそうだ。

JR東日本の担当者も「観光創造や地域活性化および駅弁文化を知っていただき、さらなる価値向上を図りたい」と願った。伝統、歴史、名産、郷土愛…。あなたは、どんな魅力が詰められた駅弁を選びますか?【鎌田直秀】

◆駅弁味の陣2022 東日本(東北・関東・北信越)の駅弁が対象。エントリーはJR東日本管内1都15県の計58品。期間は10月1日から11月30日まで。JR東日本専用ウェブサイトから投票された結果の合計でもっとも高い総合評価を獲得した「駅弁大将軍」を決定。2位の「駅弁副将軍」のほか「味覚賞」「盛付賞」「掛け紙賞」に加え、新作駅弁が対象の「初陣賞」、6地域の各トップ「エリア賞」も選出。また、食べてみたい「そそられ将軍」や、鉄道開業150年記念特別賞もある。同期間で「おみやげグランプリ2022」も開催中。