将棋の第53期新人王戦決勝3番勝負の第3局が1日、大阪市の関西将棋会館で行われ、後手の服部慎一郎五段(23)が黒田尭之五段(たかゆき=26)を144手で下し、3番勝負を2勝1敗とし、「新人王」に輝いた。名前から「忍者」の異名もある服部は、昨年度の加古川青流戦に続く2度目の棋戦優勝となった。

黒田が三間飛車を採用。難解な中盤戦を経て、主導権を握った服部が大熱戦を制した。

終局後、服部は「とりたい棋戦の1つだったので、うれしく思います」と喜んだ。

富山県出身の23歳は今年がデビュー3年目。これで本年度の成績を34勝10敗、勝率7割7分2厘。対局数、勝数ランキングではともに全棋士中1位だ。好調の要因について「ちょっと出来過ぎているかもしれない」と謙虚に話し、「特別に変わったことはせずに、一局一局を全力で指している積み重ねだと思う」と話した。

新人王戦は26歳以下、六段以下(タイトル戦経験者を除く)の若手男性プロ、女流棋士、プロ養成機関「奨励会」三段、アマチュア枠で赤旗名人戦の優勝者など40人が参加するトーナメント。決勝は3番勝負。過去には羽生善治九段、渡辺明名人、藤井聡太竜王らが優勝しており、トップ棋士への登竜門とされる。

同棋戦の16歳2カ月の最年少記録を持つ藤井と「盤を挟んでみたい気持ちはあります」と意気込んだ。

棋士仲間からは親しみを込めて「はっとり君」と呼ばれる。富山県氷見市出身の漫画家・藤子不二雄(A)さんの人気漫画「忍者ハットリくん」がある。

同郷の「ハットリくん」とオーバーラップされることに「富山では“ハットリくん”は有名。『忍者』は鋭い感じがあってうれしく思っています」と話した。

「はっとり君」が目指す将棋は型にとらわれない変幻自在な指し回しだ。プロ入りのあいさつでは「令和の忍者になれるように」と誓った。若手の登竜門のタイトルを手にし「令和の時代なのでバランス感覚というか、不思議な強さを抱ければと思います」と意気込んだ。