将棋の最年少5冠、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)が羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第2局が21、22の両日、大阪府高槻市の温泉旅館「山水館」で行われ、先手の羽生が藤井を破った。王将初防衛、5冠堅持に将棋界のレジェンドが立ちはだかった。

苦しげだった。2日目午前、羽生が優勢を築くと、藤井は1時間近い長考を繰り返した。前傾姿勢で身体を揺らし、逆転の構想を練る。終盤で劣勢に陥っても、最後まであきらめずに考え続けた。形勢の針は羽生に傾いたが、相手が一手間違えれば、大逆転のシーンもあった。

終局後、藤井は「なかなか思わしい変化が見つからなかった」と苦戦を認めた。

世代を超えたスターが初めてタイトルを争う歴史的な一戦は、先手の羽生が相掛かりの戦型に誘導した。駒損しながらも異筋の金打ちなど、羽生の渾身(こんしん)の研究手に時間を使って対応した。

過去の対戦成績では8勝1敗と大きくリードしていたが、タイトル戦では事前研究も戦い方も変わる。「2日制のタイトル戦ではそれぞれの棋風が出るので楽しみです」。昭和から平成にかけ30年以上トップを維持してきた王者の「すごみ」を肌で感じたかった。

藤井の師匠・杉本昌隆八段は32歳差の「夢の対決」に「ともに時代を代表する棋士。羽生さんは昭和生まれで平成を代表する棋士。藤井王将は令和を代表する棋士。それぞれが培ってきた将棋観が激突する。どちらが正しいではないが、いままでのプロの将棋を集約した世代を代表する激突になる」と名局誕生を期待した。

初防衛のかかる藤井は、本年度、保持する5つのタイトルのうち4つを防衛し、過去11回のタイトル戦を全て制している。王将戦は本年度最後の防衛戦となるが、レジェンドが立ちはだかった。公式戦の連勝も「10」でストップした。28日の金沢決戦に「(対局が)すぐ来週にあるので、いい状態で臨めるようにしたい」。次局は21連勝中の先手番となる。【松浦隆司】

◆王将戦 1950年(昭25)に一般棋戦として創設。翌年からタイトル戦に。8大タイトル(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の序列7番目。1次予選、2次予選はトーナメント。2予の勝ち上がり3人と、シード棋士4人の計7人による総当たり戦を例年9月から年内に開催して挑戦者を決める。同星の場合は原則、順位上位の2人によるプレーオフ。2日制の7番勝負は例年1~3月に、全国を転戦する。96年開催の第45期には、羽生善治6冠が谷川浩司王将に4連勝。叡王を除いて、当時あった7大タイトル全制覇を達成した。

【第72期ALSOK杯王将戦7番勝負・第3局以降の日程】

◆第3局 1月28・29日 石川県金沢市「金沢東急ホテル」

◆第4局 2月9・10日 東京都立川市「SORANO HOTEL」

◆第5局 2月25・26日 島根県大田市「さんべ荘」

◆第6局 3月11・12日 佐賀県上峰町「大幸園」

◆第7局 3月25・26日 栃木県大田原市「ホテル花月」