英国のボリス・ジョンソン元首相が、ロシアのプーチン大統領から「ミサイル攻撃」の脅迫を受けたと30日に放送される英BBCのドキュメンタリー番組で明かしていることが分かった。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まる直前の昨年2月2日に行われたプーチン大統領との電話会談の中で、「私はあなたを傷つけたくはないが、ミサイルがあれば1分とかからないでしょう」と脅迫されたとインタビューで語っていることを米CNNなどが伝えた。

ジョンソン氏はその前日にウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会談をしており、プーチン大統領に対してウクライナに侵攻しないよう説得を試みていることを明かしていた。

プーチン大統領はとてもリラックスした口調だったとジョンソン氏は振り返り、「どこか無関心に見える空気から、交渉に応じさせようとする私の試みをあしらっていただけだったと思う」と述べ、本気ではなかった可能性を示唆した。一方で、プーチン大統領の言葉の真意を確かめる手段はなく、18年には英国内で元ロシアスパイの殺人未遂事件も起きていることなどから脅迫を深刻に受け止めていた可能性もあると見られている。

報道によるとジョンソン氏は電話会談の中で「侵略は完全な大惨事になる」と警告し、「ウクライナが北大西洋(NATO)に加盟することは当面ない」とも述べ、侵攻を食い止めるための説得を試みたと語っているという。また、軍事侵攻すれば西側諸国から制裁を受け、ロシア国境に駐留するNATO軍が増えることになるとも忠告したという。

「プーチンVS西側諸国」と題した番組では、ウクライナを巡るプーチン氏と各国首相のやりとりを描いている。ロシア側は、「意図的な虚偽」またはジョンソン氏の「誤解」のいずれかであると述べ、ミサイル攻撃発言を否定している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)