藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が史上最年少での名人獲得と7冠に向け、好発進した。将棋の第81期名人戦7番勝負第1局が6日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われた。5日午前9時からの2日制で始まった対局は、6日午後8時39分、110手で先手の渡辺明名人(38)を下し、先勝。初日の封じ手約1時間前の軽い仕掛けから攻めをつないで押し切った。第2局は今月27、28日、静岡市「浮月楼」で行われる。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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将棋の格言は「居玉は避けよ」ですが、藤井竜王は「居玉がいい形」という異例の指し方で開幕局を制しました。初日の夕方に6筋からうまく戦いに持ち込みました。歩を突き捨てて桂を跳ねる。この桂が、最後まで渡辺玉の「退路封鎖」に役立ちましたから。本当に「桂使いがうまい」棋士だと感じます。その後も9筋からうまく攻めましたが、これは私がA級順位戦で羽生さんに勝った時の指し方と同じ。研究していたのではないでしょうか。

不可解なのは終盤、渡辺名人が5筋に馬を引いた時の対応手です。3筋に桂を打てば受けなしだったでしょう。「変調かな」というのが私の感想です。

対する渡辺名人ですが、角道を止めるというまれな作戦を見せました。中盤、2筋の歩を突きましたが、そこで3筋の歩を突いて、飛車と銀で攻めれば有望でした。筋違いでしたね。とはいえ、最後の1冠となった名人戦にかける意欲や闘志は満々とみました。巻き返しが期待できます。(加藤一二三・九段)