23日投開票の東京・世田谷区長選で、自民党と日本維新の会が推薦する元財務省官僚の内藤勇耶(ゆうや)氏(29)と、4選を目指す現職保坂展人氏(67)が、一騎打ちの激戦となっている。統一地方選の都内の区長選では北区長選とともに、自民&維新の異例のタッグで「打倒・現職」を目指す構図となっている。

自民系の候補は過去3回の同区長選で、保坂氏に敗れた。特に前々回2015年は約10万票、前回2019年は約6万8000票の差をつけられる大敗。自民は今回「必ず勝てる候補を立てる」と、昨年選考委員会を立ち上げ、候補者選考に着手。世田谷区で生まれ育った内藤氏に、白羽の矢を立てた。

内藤氏は2月に財務省を退職し出馬を表明。29歳で、もし勝てば23区では初の20代区長となる。街頭では「世田谷区を前に進めるために出馬を決意した。言ったことはやる、当たり前の区政をしたい」と訴える。

出馬表明時から、保坂区政で進む区の新庁舎建設で、区民に400億円の負担が生じると指摘。自身は命名権の活用などで区民負担をなくすとし「400億円の税金をコンクリートに使うのか、住民サービス向上に使うのか」と主張。自民党幹部も応援に入り、萩生田光一政調会長は「世田谷を変える最後のチャンスだ」と訴えた。最終盤には、維新共同代表の吉村洋文大阪府知事の応援も検討されている。

一方、現在3期目の保坂氏は、街頭演説で「全体として世田谷区が12年間進んできた道は誤っていなかった」と、強調。区の福祉の仕組みづくりを例にあげ「皆さんの声を聞くことからスタートすることが、私のやり方」と訴えた。「提案を聞いて『そうだな』とすとんと落ちたら(考えを)変えた」と述べ、その1つが、内藤氏が指摘する新庁舎の問題とも主張。工事は3分の1進んでおり、400億円のうち170億円分は支出が確定しているとして「(区民負担)ゼロはあり得ない」と、反論する。

衆院議員時代は、ピンチから何度も復活して議席を獲得し「ゾンビ」といわれた。それでも今回は、過去3回の区長選に比べると「厳しい戦い」(関係者)だ。自民党で総務会長を務めた笹川尭氏が応援に入るなど、政党や会派を超えた人脈も駆使する保坂氏は「そもそもこの選挙は、与党対野党(の構図)ではやっていない。区民の審判をきちんと受ける。(当選すれば)最後の総仕上げにしっかり取り組みたい」と話した。【中山知子】

◆世田谷区長選候補者◆※届け出順

内藤 勇耶(29)元財務省職員 無所属(自民、維新推薦)

保坂 展人(67)区長、元衆院議員 無所属