自民党は28日、党本部で開いた「性的マイノリティに関する特命委員会」などの合同会議で、LGBTなど性的少数者に対する理解増進法案をめぐる議論を始めた。岸田文雄首相が議長を務める5月のG7広島サミット前の成立を求める声が国内外で強まっているが、自民党内には保守派を中心に依然、慎重論や反対論が根強く、推進派との間で意見が集約される見通しは、まったく立っていない。

会議には39人が出席。出席者によると、この日も、法案への賛否の意見が対立した。西田昌司参院議員は会合後の取材に「社会の根幹や家族そのものに関わる問題であり、慎重にやるべきだ」と話した。「(サミット前と)期限を区切ることに意味があるのか。単なるパフォーマンスにならないようにというのがほとんどの方の意見だ」とも述べた。

一方、2年前に超党派議連による同法案のとりまとめに携わった稲田朋美元防衛相は、取材に「理解増進法については皆さん賛成だが、『差別は許されない』という文言が入ることや性自認の定義には、懸念の声が上がった」と明かした。「イデオロギーの問題ではなく、苦しんでいる当事者に対し手を差し伸べる問題だ。国会の責任として、理解増進法をつくった上で、国民的議論を行うべきだと申し上げた」と話した。

同法案は、2021年5月に超党派議連が主導してまとめたが、「差別は許されない」の表現を入れることに自民党内の一部保守派が反対、自民党三役預かりとなったまま、2年近くたなざらしにされてきた。今年2月の元首相秘書官による差別発言を機に法案成立への機運が高まり、与党公明党も広島サミットを前の法案成立へ向けて自民党内の意見集約を求めている。

日本を除くG7各国には、LGBTへの差別を禁じた法令が定められており、法整備の現状に対して、国際社会から日本に注がれる視線の厳しさを指摘する声も少なくない。5月19日に始まるサミットまで時間が限られており、自民党は大型連休明けに再び議論を行うが、意見がまとまる見通しは立っていない。最後は「岸田首相の指導力に期待するしかない」(関係者)の声も出ている。【中山知子】