将棋の最年少7冠、藤井聡太王位(竜王・名人・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が佐々木大地七段(28)の挑戦を受ける、「伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦7番勝負第2局」が13、14の両日、有馬温泉(神戸市北区)の老舗旅館「中の坊瑞苑(ずいえん)」で行われ、後手の藤井が98手で勝ち、開幕2連勝とした。王位4連覇まであと2勝とした。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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藤井王位の圧勝でしたね。対局の根幹は、佐々木七段が攻めに繰り出してきた銀への3回のさえた対応手でした。

まずは4筋に出てきた銀に対し、左桂を跳ね出したのが、強手でした。挑戦者は意表を突かれたのではないでしょうか。普通なら銀を上げますから。

終盤は飛車を2筋にタダ捨てして、銀で取らせています。大駒を捨ててでも銀を下げさせて攻撃速度を鈍らせる好手。「終盤は駒の損得よりもスピード」という格言を逆用しました。

さらに持ち駒の金を4筋に打っての銀取り。手厚い攻防手です。攻めの中心となっていた挑戦者の銀を成り捨てさせ、手持ちにした直後、天王山に打ち込んで押しつぶしました。

先手で得意とする相掛かりを採用した挑戦者ですが、今回の先手先手3八銀、後手後手7二銀型の戦型は端的に「やめましょう」と言っておきます。この将棋は先手が先に攻めることができますが、後手の方がだんだん形が良くなっていきます。これにこだわると何回やっても勝てません。改良点も見つからないというのが、私の意見です。これを踏まえた上で、練り直した作戦を見てみたいです。(加藤一二三・九段)