将棋の最年少7冠、藤井聡太王位(竜王・名人・叡王・棋王・王将・棋聖=21)が佐々木大地七段(28)の挑戦を受ける、「伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦7番勝負第4局」が15、16の両日、佐賀県嬉野市の老舗旅館「和多屋別荘」で行われ、先手の佐々木が85手で藤井を破り、対戦成績を1勝3敗とした。王位4連覇を狙う藤井は「異筋の角」に苦戦し、シリーズ初黒星。第5局は22、23日、徳島市「渭水苑」で行われる。

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左手を頬に当て、首をガクッと落とした。藤井が静かに投了を告げた。戦型は先手の佐々木が得意とする相掛かり。1日目序盤から長考合戦となり、両者とも1手1手を慎重に指した。2日目午前は8手しか進まず、中盤のねじり合いが続く。終盤、佐々木が中段に放った「異筋の角」に苦戦し、劣勢に陥った。

「2日目は午前中から苦しいかなと思っていた。先手4五角(49手目)は、ちょっと見落としていた。打たれてみると飛車が取られてしまう形で、厳しかった」。絶対王者には珍しい、読み抜けがあったようだ。

最後は強烈な巻き返しを見せ、攻め合いに持ち込んだが、シリーズ初黒星を喫した。「1日目から長考を重ねるような感じになったが、2日目、配置の悪さに苦労する展開になってしまった。組み立てに少し問題があったかなと思います」。

王位4連覇は次局以降に持ち越しとなった。8大タイトルのうち7つを保持する藤井は、史上初の全8冠制覇に残すは王座のみ。すでに王座戦の挑戦権を獲得しており、永瀬拓矢王座(30)との王座戦5番勝負は31日、神奈川県秦野市「元湯 陣屋」で開幕する。

22日から徳島市で始まる王位戦第5局に敗れると、王座と合わせ、平行してダブルタイトルを戦うことになる。第5局は勝利し、王座戦のみに集中したいところだ。

20年の棋聖戦で初タイトルを獲得して以降、タイトル戦の出場は17度目となり、現在、16連覇中。タイトル獲得率は100%。心強いデータもあるが、油断はない。

第5局へ向け「本局は課題の多い内容だったので、立て直せるようにしたい」。負けた後の「修正力」は驚くほど強い。【松浦隆司】