東京都台東区の神社「上野東照宮」に悪徳商売をする偽僧侶が現れ、神社が注意を呼びかけている。

神主の嵯峨まきさん(44)によると7月23日、オレンジ色の僧衣を着たアジア系とみられる偽僧侶が、イギリス人観光客の男性に「特別な祈祷(きとう)をしてもらえる」などとうそをつき、1万円で数珠と小判を模したステッカーを販売した。男性が神社のみこにステッカーなどを示し祈祷を希望して、被害が発覚したという。

このときは職員4人で偽僧侶を発見し、警察に引き渡した。観光客の男性は時間の都合で帰路につき、1万円は手元に戻らないままだった。偽僧侶も結果的には逮捕などには至らず、その場から立ち去っていた。嵯峨さんは「(偽僧侶は)防犯カメラがなく職員が見えないところを狙っていた。こちらの名前を使った詐欺ですから残念です」と肩を落とした。

嵯峨さんによると、偽僧侶は30代~40代くらいとみられ、約160センチの小柄な男性。8月23日にも神社で目撃されたという。神社では境内の見守りと注意喚起を行っている。

偽僧侶が売ったステッカーは中央に足を組んで座る菩薩(ぼさつ)のような絵が描かれ、上部に「南無観世音菩薩」の字と英語表記で「namas Guanyin Bodhisattva」と書かれていた。観世音菩薩は仏教で信仰されている菩薩の1人。下部には虹色の「開光護身符」の字と黒字で「Kai guang Amulet」と記されている。「Amulet」は英語とみられ、日本語でお守りの意味。ステッカーの正体は不明だが、「開光」にあてられた「Kai guang」は中国語とみられ、中国語の「開」は「kai」と読み、「光」は「guang」と読む。

上野東照宮は1627年(寛永4)創建の神社。東照宮は栃木県の日光や静岡市の久能山など全国に数多くある。ご祭神は徳川初代将軍の徳川家康公、「暴れん坊将軍」で有名な8代将軍の徳川吉宗公、幕府が朝廷に政権を返上する大政奉還を進言した15代将軍徳川慶喜公としている。偽僧侶は僧衣を着ていたというが、東照宮は3将軍を祭る神社。上野東照宮のホームページでは事件について「当宮とは何の関係もなく、偽僧侶による詐欺です。当宮が授与所以外で授与を行うことは絶対にありません。また神社ですので僧侶の職員もおりません」と説明している。【沢田直人】