信州大特任教授で弁護士の山口真由氏は9日、コメンテーターを務めるテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に出演し、岸田政権や自民党で浮上している「減税論」をめぐる動きについて言及。「選挙の前に減税すればとか、給付金をまくというのは、さすがに国民をばかにしているのではないかと思う」と指摘した。「(経済政策の)パッケージがまったく見えてこない」と、岸田首相の対応に苦言も呈した。山口氏は、財務省キャリア官僚出身。

岸田文雄首相が、今月とりまとめる経済対策をめぐり、物価高対策に関して「今こそ経済成長の果実を国民に還元すべき」とした上で給付措置や減税、社会保障負担の軽減に言及しているほか、自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が、消費税率5%に時限的に引き下げるよう提言。岸田首相については「増税メガネ」など、自身に対する「増税イメージ」を気にしているといわれる。また「減税解散」の可能性も取りざたされている。

山口氏は、岸田首相の手法について「アベノミクスは、賛否はあっても何をしたいのかは分かった。企業減税や規制緩和をする、そうしてイノベーションを起こして成長させていってほしいという、いわゆるサプライサイドの経済学といわれるものだと思う。岸田首相は当初、それをしないんだろうと思っていた。少子高齢化対策のような感じにして、受益を広く感じられるようにベーシックサービスを税金でまかなっておいて、受益が感じられるのだから少しだけ増税をさせてくださいという北欧型に転換していくんだと思ったら、どうもそうでもないらしいと。受益はあるんだけど、減税もする。全くパッケージが見えてこない」と指摘した。

「日本は30年間、所得税と法人税を減税して『税の先食い』をして、足りなくなったら消費税を上げるということを、ずーっとやってきた。またそれをやるのかと思うと、ため息が出るような話だと思う」とも訴えた。

さらに「岸田さんは、何をやりたいのかはっきりしたほうがいい。そうしないから、周りが言いたいことを言って、いけるのならやってみようみたいことを言うわけじゃないですか。マイナンバーでも、インボイスでもいいと思う」「どういうことをやりたいのかきちんと言わないから、周りからいろんなことが出てきて、期待値が上がってしまうと、何かせざるを得ないという。そういう状況になっているのではないか」とも指摘した。

さらに「岸田さんはもともと、法人税(減税)だけのおつもりだったのかもしれないが、ここまでばーっと言われて法人税だけとなったらまた批判されるので(他にも)やらざるを得なくなる」と苦言を呈した。「政府の政策を通して還元していこうというのが、もともと、大きな政府の考え方だ。それを減税で還元するというのは、小さな政府論者になる。岸田さんはもともと小さな政府論者ではないでしょうという話。すぐに減税、というふうにたきつける方もたきつける方だが、自分の政策ではないので(首相は)乗ってはいけないと、私は思う」と、訴えた。