自民党の世耕弘成参院幹事長は25日、岸田文雄首相の所信表明に対する代表質問を行った際、首相の政治姿勢やリーダーの資質、発信のあり方について、首相に批判まじりのダメ出し、苦言を連発した。自民党幹部の首相への代表質問の内容としては異例だ。

世耕氏は「(国民に)なぜ評価されないのだろうというのが、率直なご心境ではないか」と指摘。「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないからではないか」と断言し、本会議場はざわついた。世耕氏自身が考えるリーダー像を「決断し、その内容をわかりやすい言葉で伝えて人を動かし、その結果について責任を取る。しかし残念ながら、岸田総理の決断と言葉について、いくばくかの弱さを感じざるを得ない」と指摘した。

その上で「その弱さが顕著に露呈したのが、今回の減税にまつわる一連の動きだ」と主張。首相が9月25日に「税収増を国民に適切に還元する」と述べたことに触れながら「還元という言葉がよく分からなかった」と指摘。「自分で決断するのではなく。検討を丸投げしたように映った。総理のパッション(情熱)が伝わらなかったから言葉が独り歩きし、給付か減税か、はたまた両方か、総理の真意について与党内でもさまざまな臆測を呼んでいる」「物価高に何をしようとしているのか、まったく伝わらなかった」と首相の対応を疑問視。「もし9月25日に『十分な給付を迅速に行う。一方で消費の停滞には所得減税で対応する。どのような手法をとるかは相談しながら決めていきたい』とわかりやすく説明していたら、政府与党での混乱もすることなく多くの国民も総理の姿勢をよく理解してくれたでしょう」と、訴えた。

また「総理は国民への発信方法に心を砕いておられる」とした上で「綸言(りんげん)汗のごとし」という格言を引き合いに「リーダーの発した言葉は、かいた汗のように元に戻すことはできない」とも訴えた。

「総理自身がじっくり考えて決断し、水面下の根回しも入念に行い、その発言で政権の方向性を確定させ、なんとしても国民の支持を得るんだという覚悟で、政治家としての言葉で発信していただきたい」とも指摘した。世耕氏のダメだし連発には、野党側から拍手が起きた。

一方、岸田首相は「国民が直面する課題を先送りせず、必ず答えを出す。この覚悟をもって取り組んで参ります」などと応じた。リーダーのあり方については「変化の足音をしっかり伝え、目指すべき将来像へ強い意志をもって政策を実現していく姿勢を示すことが重要と考える。そのように振る舞えているか、常に顧みつつ、明日は今日よりよくなると信じられる時代を実現することを明確にお誓いし、有言実行を貫いていきたい」などと述べた。