商売繁盛の神様「えべっさん」の総本社、西宮神社(兵庫県西宮市)で10日、参拝者が開門と同時に参拝一番乗りを目指し境内を疾走する恒例の伝統神事「福男選び」が実施された。

午前6時、太鼓の音を合図にスタート位置の「表大門」が開き、くじ引きで選ばれた最前列の108人を皮切りに参拝者が本殿までの約230メートルを駆け抜けた。

先頭で駆け込み「一番福」になったのは初挑戦という追手門大学院大1年、高谷望巳さん(19=兵庫県尼崎市)。高校時代は陸上部に所属し、県大会では男子400メートルリレーで3位となり、近畿大会に出場した。100メートル、11秒29の快足で栄冠をつかんだ。

「走るのが好きです。緊張がまだ続いていますが、今年1年間、みんなに福を届けたい。能登半島地震で被災された方々に走る姿をみていただき、少しでも元気になってもらえたらうれしい」

高谷さんは先頭グループとなる、くじ番号は「15」を引き当てた。スタートを決めると、本殿の直前で前を走る男性が転倒するハプニング。「運もよかったのかなと思います」と振り返った。

「二番福」は鳥取市の消防隊員の山下慎之介さん(23)。1日に発生した能登半島地震では被災地への緊急消防援助隊として派遣される予定だったが、メンバーから外れた。今後、派遣される可能性があるという山下さんは「被災地へ行く予定だったので、福男に参加するのは、やめようかなと思っていた」と話し、「1日も早い日常に戻れるように少しでも力になりたい。現地に行って福を届けたい」と思いをはせた。

「三番福」は神戸大4年、多田龍平さん(23)。

福男選びは、本えびすの1月10日に行われる「開門神事」の一環。本殿への先着3人を1~3番福と認定する。21、22年はコロナ対策として、午前6時に表大門は開いたが走り参りは行わず、集まった参拝者を係員が本殿まで歩いて誘導した。昨年、3年ぶりに走り参りを再開した。