能登半島地震で震度6強を観測、大きな被害を受けた石川県穴水町。大相撲の幕内力士、遠藤(33=追手風)の出身地でもある。

「遠藤関 展示室」が設置されている「さわやか交流館プルート」には、避難所として100人以上が身を寄せる。18日、多くの住民が初場所のテレビ中継を食い入るように見つめていた。地元の星の活躍が、厳しい避難生活の力になっている。

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「行け!」。地震から2週間以上が経つ今も、100人以上が避難する「プルート」の一室。テレビ画面の遠藤に、熱いエールが送られた。この日は惜しくも宝富士(伊勢ケ浜)に敗れたが、避難者からは感謝の声が上がった。

元日から避難生活を続ける松村正夫さん(84)は「頑張っているよ。一生懸命やっている。『地元の星』ですから、みんな感謝している」とほほ笑んだ。中学時代に穴水にある相撲場に通い「能登地方の大会で100人に勝った」という武勇伝を持つ菅原明さん(91)は「負けても勝っても、応援しています。けがをしないで頑張ってもらいたい」と活躍を願った。

施設1階には、遠藤が大学時代に獲得したトロフィーやファンが撮った写真などが並ぶ「遠藤関 展示室」が入る。だが地震発生後、その展示室には布団が敷かれ、避難者たちが身を寄せ合っている。厳しい生活が続くが、夕方からの大相撲中継で、故郷のヒーローに力をもらう。

80代の女性は自宅の柱にひびが入り、家具が倒れるなどした。帰宅の見通しは立っていないというが、「(被害が)もっとひどい人はたくさんいる。食べ物も皆さんから送っていただいて。命があるだけで喜べます」と話した。

ひび割れた道路に、倒壊した家屋。町には至る所に激震の爪痕が深く残る。プルートの関係者は、元日の地震発生時について「建物に入りきらない人が避難していた。椅子で一夜過ごす人もいた。暖房が効かずみんな寒がっていた」と振り返った。

町は、断水の状況が続いている。関係者は「仮設トイレはあるが、ノロウイルスやインフル、コロナなどの感染症が怖い」と口にした。一方で、ボランティアによる炊き出しや自衛隊による入浴支援などがあり、生活環境は改善傾向にある。関係者は「ドタバタしていますが、日々良くなっていると思います」と前を向いた。【沢田直人】