将棋の第17回朝日杯オープン戦決勝、藤井聡太8冠(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)対永瀬拓矢九段(31)が10日、東京・有楽町の「有楽町朝日ホール」で行われた。

昨年8~10月の王座戦5番勝負の再現となった対局は、先手の永瀬が勝ち、初優勝を飾った。藤井の2年連続5回目の優勝はならなかった。

初優勝を目指す永瀬が、練習将棋仲間の藤井を相手に矢倉をぶつけた。「胸を借りるだけ、一生懸命やるだけと思っていました」。意表を突く作戦は、藤井の持ち時間(各40分)を削るという点で功を奏した。「角換わりでは勝負にならないので、違う戦型にしようと思いました」と終局後に話した。

午前中の準決勝の西田拓也五段(32)戦はお互いの玉が敵陣に入った。219手もの長手数の末に振り切った。「300手でもおかしくない。体感として少ないかと思いました」とケロッとしていた。そんな気力が8冠にも通じた。

叡王1期、王座4期の獲得経験はあるが、公式棋戦は若手限定の新人王戦と加古川青流戦を2012年(平24)に制しただけ。「全棋士参加棋戦の優勝は初めてですので、すごい自信になると思います」。

20年6月の棋聖戦と王位戦挑戦者決定戦、21年の竜王戦挑決3番勝負とすべて藤井に敗れた。勝った藤井はこのタイトルを全て獲得し、自身が保持していた王座も奪っていった。ちょっぴりではあるが、「お返し」できた。

◆朝日杯 07年創設。全棋士と3人の女流棋士、10人のアマチュア強豪が出場する。1次予選、2次予選、本戦とすべて一発勝負の勝ち抜き戦。18年は藤井が15歳6カ月の史上最年少記録で制した。今回は1次予選決勝で西山朋佳女流四冠名人(白玲・女王・女流名人・女流王将=28)が佐々木大地七段を下し、女流棋士として初突破(2次予選で佐藤康光九段に敗退)。優勝賞金は750万円。