全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「2024年本屋大賞」が10日、東京都内で発表され、宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)が選ばれた。

授賞式には、昨年の本屋大賞作品「汝(なんじ)、星のごとく」(講談社)の著者、凪良ゆうさんが登場し、宮島さんに花束を贈呈。お祝いのスピーチを述べた。凪良さんは20年の「流浪の月」でも本屋大賞を受賞している。

凪良さんは「(自身が本屋大賞を受賞した)どちらの作品も、書店員さんの応援のおかげで、たくさんの方にお届けすることができ、うれしくありがたく思う一方で、とても気になるニュースがあった」と切り出し、全国で書店が減少していることに言及。「本屋大賞が始まった約20年前には、全国に2万軒を超す書店さんがありましたが、10年前には1万5000軒、昨年は1万軒と、この20年でほぼ半数近くまで減ってしまったということです」と述べ、自身を支援してくれている書店の中にも閉店の連絡があったと明かし「言葉にならないやるせない気持ちになった」と打ち明けた。

その上で「私が今あるのは、本屋さんのおかげ。いちばんの恩返しは、作家なのでいい作品を書いてお届けすることだが、この1年は本屋さんのためにできることはないか、考えてきたつもりです。それは本屋大賞をいただいた作家の責任だと思っているからです」と述べた。

その上で、今年受賞した宮島さんに「こういうことを言うとちょっとプレッシャーになるかもしれないけれど、そのバトンをここからは宮島さんと成瀬にお渡ししたい」と述べた。「バトンはお渡ししましたが、引き続き、書店さんを盛り上げるお手伝いができたら」とも口にした。

今年の「本屋大賞」ノミネート作品は次の10作品。

◆黄色い家(中央公論新社)川上未映子

◆君が手にするはずだった黄金について(新潮社)小川哲

◆水車小屋のネネ(毎日新聞出版)津村紀久子

◆スピノザの診察室(水鈴社)夏川草介

◆存在のすべてを(朝日新聞出版)塩田武士

◆成瀬は天下を取りにいく(新潮社)宮島未奈

◆放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件(ライツ社)知念実希人

◆星を編む(講談社)凪良ゆう

◆リカバリー・カバヒコ(光文社)青山美智子

◆レーエンデ国物語(講談社)多崎礼

一方、翻訳小説部門は、ファン・ボルム著、牧野美加訳の「ようこそヒュナム洞書店へ」(集英社)が、発掘部門は井上夢人さんの「プラスティック」(講談社文庫)が、それぞれ選ばれた。