長谷川体育施設(東京・世田谷区)陸上競技部監督の石田智子さん(40)は、元陸上短距離選手。05年(平17)日本選手権女子100メートル優勝、400メートルリレー(第1走者)の元日本記録保持者だ。

 五輪を夢みて35歳で挑んだ12年の日本選手権100メートル決勝。予選をトップで通過したものの、足にけいれんを起こし、夢は断たれた。「五輪以外じゃもうこんなに頑張れない」と引退を決意した。

 「何か会社に恩返しできる形があれば」と監督を引き受ける一方で、リオ五輪・パラまでの4年間、ナショナルチームのコーチングスタッフを務めた。現在5人の女子部員を預かる。「孤独と闘う競技だから、自分で感じ考え動くことで成長させる」。指導の目標は「私の果たせなかった夢を託したいとは思わない。選手自身の夢がかなえられればいい」。

 家に帰れば4歳と1歳になる男児の母だ。子供たちが本格的に陸上を始めたら「最初のレースで私が勝ち『母ちゃん、速いな!』って言わせたい」。それまでは選手に交じり、ひそかにトレーニングを続ける。