衆院3補選が28日、投開票され、9人が乱立した衆院東京15区補選では、立憲民主党の元江東区議、酒井菜摘氏(37)の当選が確実になった。東京都の小池百合子知事が全面に立って応援した作家の乙武洋匡氏(48)は届かず、2022年参院選に続いて、今回も国政には届かなかった。

乙武氏は今回の選挙戦で、特定の陣営に妨害行為を受け続け、選挙戦中に公選法の「選挙の自由妨害罪」の罰則強化を公約に追加せざるを得ない状況に。妨害行為の中で街頭演説をすることも多く、それを避けるため、選挙戦後半は小池氏らと選挙カーに乗って選挙区内の細かい路地にまで入って支持を訴えるなど、選挙戦略にも大きな影響が及んだ。

選挙戦最終日の27日は妨害行為がなく、期間中にできなかった有権者とのふれ合い作戦を急きょ実施。「車いす遊説」で1435人とハイタッチした。知名度は高く「私にしかできない、他の政治家や候補者にはできないことがある」と訴えたが、出馬表明も告示8日前で、有権者に浸透するには時間が足りなかった。

過去の女性問題などをめぐり自民、公明両党が推薦を見送ったことで、小池氏頼みの選挙戦を余儀なくされた。マイク納めでは「こんな選挙はもうこりごりだよ。右や左や妨害だ、そんな選挙やりたいんじゃないよ。だれの政策がいちばん信頼できるかを判断してもらいたかった」と、くやしさをあらわにする場面もあった。

最終盤には、長年の友人で「2ちゃんねる」開設者で元管理人の「ひろゆき」こと西村博之氏もフランスから駆けつけ2度応援に入ったが、支持拡大には結びつかなかった。

乙武氏は妨害行為について「批判を受けたり目の前で罵詈(ばり)雑言を浴びるのはそんなにこたえてはいないが、伝えたいことが伝えられず、聞きに来てくださっている方に届かないくやしさやもどかしさが、しんどかった」と振り返った。「無理やり割り込んで、大音量でというのは2年前(の参院選)はなかった。今後選挙がどうなっていくのか不安。私だけでなく有権者の権利侵害になっている」と危機感を示したが、後味の悪さを残した。

同補選には、NHKから国民を守る党の福永活也氏、参政党の吉川里奈氏、無所属の秋元司氏、日本維新の会の金沢結衣氏、つばさの党の根本良輔氏、日本保守党の飯山陽氏、無所属の須藤元気氏も立候補した。

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