デビュー9年目の石川裕紀人騎手(27=相沢)が、新しい景色を見た。ダート界の新星、ジュンライトボルト(牡5、友道)とのコンビでJRA・G1初制覇。G1騎乗19回目で念願が成就した。

JRA・G1・17勝目の友道康夫師(59)は、ダートでは初のG1星。今夏の砂転向後4戦目で頂点に立ち、来年はフェブラリーS(G1、ダート1600メートル、2月19日=東京)や、ドバイ国際競走参戦も視野に入ってきた。

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直線で少し外に持ち出されたジュンライトボルトは、目の前にできたスペースをぐいぐいと伸びた。「ゴーサインを出した時の脚が素晴らしかった」。石川騎手は愛馬が加速を始めた瞬間、「勝ったと思った」という。手応え通りに内でひしめく馬を次々とかわし、最後に残ったクラウンプライドもゴール寸前でパス。今夏にダートへ転向したばかりのキングカメハメハ産駒が、デビュー9年目の鞍上にG1初制覇をもたらした。

ゴール後、何度もガッツポーズをした石川騎手は「素直にうれしい」と声を弾ませる。ダービー3勝の友道師にとっては、ダートG1では初の栄冠。「直線でどこを割ってくるのかと心配したが、うまく乗ってくれた」と騎乗をたたえた。

デビューから21戦続けて芝で戦ってきたジュンライトボルトは、7月福島のジュライSで初めてダート戦を走ることになった。「ずっとダートを走らせてみたかった。芝で結果がでなくなったのでいいタイミングだった」と師は振り返る。騎乗依頼を受けたのが石川騎手だった。「声をかけていただいた詳しい経緯は知らないけど、僕は運命を感じている」。いきなり2着に好走すると次のBSN賞を快勝、前走のシリウスSで重賞初制覇を果たした。

その後、チャンピオンズCを目指すことになってからは「ずっと緊張していた」と鞍上は打ち明ける。それをほぐしてくれたのも愛馬だった。「パドックでまたがった時、すごく具合がいいと感じ、それで緊張がほぐれた」。直線で馬群に包まれても、あわてなかったのも自信があったから。「一番はジュンライトボルトに感謝したい」とパートナーをたたえた。

ウイナーズサークルでの勝利者インタビュー。スタンドを埋め尽くしたファンの前で石川は「ブラボー」と叫んだ。騎手としてデビューする前から夢見てきた光景だ。「物心がついた時から騎手になりたくて、ずっと見たかった景色だった」。夢がうつつになった瞬間だった。【岡本光男】

◆ジュンライトボルト ▽父 キングカメハメハ▽母 スペシャルグルーヴ(スペシャルウィーク)▽牡5▽馬主 河合純二▽調教師 友道康夫(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 25戦7勝▽総収得賞金 2億7772万3000円▽主な勝ち鞍 22年シリウスS(G3)▽馬名の由来 冠名+稲妻+落雷

◆石川裕紀人(いしかわ・ゆきと)1995年(平7)9月22日、東京都生まれ。14年3月1日中山7Rでデビュー。同年6月1日東京2Rのニシノソラカラで初勝利。JRA通算4619戦242勝。G1は19回目の騎乗で初勝利。JRA重賞は7勝目。162センチ、50キロ。美浦・相沢厩舎所属。