4万人超えのファンを魅了する走りだった。2番人気ジャスティンパレス(牡4、杉山晴)が中団から突き抜け、念願のG1初制覇を新装・京都競馬場で飾った。クリストフ・ルメール騎手(43)は19年フィエールマンから京都の天皇賞・春“3連覇”。杉山晴紀調教師は、41歳4カ月7日で同レース最年少制覇となった。

1番人気のタイトルホルダー(牡5、栗田)は2周目4コーナーで競走を中止、右前肢ハ行と診断された。

   ◇   ◇   ◇

光り輝くまっさらなターフを、漆黒の馬体が躍動した。ジャスティンパレスが2馬身半差の貫禄勝ち。ルメール騎手は左手の人さし指にキスをし、ガッツポーズで新装・京都に訪れた4万人を超えるファンと喜びを共有した。「お客さんが多くて、とてもエキサイトしました。気持ち良かったね。勝てて本当にうれしい」。満面の笑みで格別の1勝をかみしめた。

冷静さが勝利をグッと引き寄せた。好スタートから中団インでじっと我慢。「長距離で大切なのは冷静さだからね」。ペースが速いと瞬時に判断し、ベストポジションで折り合いをつける。タイトルホルダー競走中止のアクシデントにも動じずにレースを進め、勝つ自信が確信に変わったのは4コーナーから直線にかけて。「そこまでリラックスして走れていた。手応え、反応も良かったし、すごい脚を使ってくれた。勝つと思ったよ」。コンビ4戦4勝の愛馬を“ランボルギーニ・ウルス”と大型のスーパーカーに例え、パワフルな走りを絶賛した。

“家族”の声援を大きな力に変えた。勝利騎手インタビューを終えたルメール騎手は、笑顔でフランス人の男性とハグをした。「友達です。フランスから来てくれた。彼も昔はジョッキーでした。(自分が)小さい時から知っています。セカンドファーザーですね。だからとてもうれしかった」。歴史に残る新装・京都競馬場でのG1制覇は、ルメール騎手にとってかけがえのないものになった。

長距離界に新たなスーパーホースが誕生した。今後について、杉山晴師は「オーナーと相談します」と明言は避けたが、さらなるビッグタイトル奪取に期待がかかる。4歳春に花開いたディープインパクト産駒の素質馬。日本を代表するステイヤーの新たな冒険がここから始まる。【藤本真育】

◆ジャスティンパレス ▽父 ディープインパクト▽母 パレスルーマー(ロイヤルアンセム)▽牡4▽馬主 三木正浩▽調教師 杉山晴紀(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 10戦5勝▽総収得賞金 4億3466万6000円▽主な勝ち鞍 22年神戸新聞杯(G2)23年阪神大賞典(G2)▽馬名の由来 冠名+母名の一部