日曜の函館競馬場-。馬場入りする出走馬たちの後ろを歩き、馬場入場後は他の誘導馬たちとともに悠然と歩く。素晴らしい競走生活を終え、誘導馬という新たなキャリアで輝いているクリンチャーに会いました。
台風直撃の中で行われた17年の菊花賞は昨日のことのように覚えています。1週間、栗東トレセンで取材。秋初戦で敗れたセントライト記念からの激変を教えてくれたのは担当の長谷川助手でした。「京都外回り」の難しさ、攻略の手応えを教えてくれたのが、藤岡佑騎手でした。いつも優しい宮本師が燃えていました。当日、強烈な雨と風の中、徐々に位置を押し上げ、2周目の下り坂からロングスパート。最後はキセキに負けてしまいましたが、あの激走(10番人気2着)は忘れることができません。
翌年秋、新装されたパリロンシャン競馬場で挑んだ凱旋門賞は現地で取材させてもらいました。馬場入りでは武豊騎手を背に、クリンチャーはロンシャンの直線を堂々と歩きました。日本を代表する1頭でした。
同期のG1馬4頭をねじ伏せた京都記念、ダートの重賞&G1戦線での激闘もたくさんのファンが記憶していると思います。競走馬としての長い現役生活を終え、函館競馬場で誘導馬になったクリンチャー。凱旋門賞に出走し、JRAの誘導馬になった馬は初めてだそうです。
函館競馬場・業務課の渡辺雅也普及係長に話をうかがうと、「クリンチャーが函館に来ることが決まって、反響がすごかったです」と教えてくれました。「誘導馬としてデビューする前に場内で展示しているときからたくさんの方が集まって…、競馬場で配布している誘導馬の名刺も大人気です。2月に来たときは去勢したばかりで乗り難しいところがありましたが、賢い馬ですね。本当に賢い馬です。最初は返し馬で一緒に行こうという気配がありました。ただ、賢いので、人間の指示をしっかりと受け入れてくれます。とても乗りやすく、背中も素晴らしいです。今は誘導馬に専念していますが、今日も(乗馬園で)小さい子どもたちを乗せて練習してきました」。
現在は先輩誘導馬が先導し、後方から馬場入りに付き添う形ですが、いずれは先頭で誘導する役目を引き受けたり、あるいは馬術競技にチャレンジすることもあるかもしれない、とのこと。元気な姿をこれからも見せてもらえるように…。新天地で奮闘する9歳馬クリンチャーの姿に勇気づけられました。
今朝(日曜)も午前4時半に調教スタンドへ。ジョッキー、調教師の姿も多く、来週末へ向けて速い時計を出す馬も…。競馬では地元函館出身の鷲頭騎手の勝利があり、好調な佐々木騎手の活躍があり、柴山騎手のJRA通算600勝があり、横山武騎手の土日連続メイン制覇があり…、今日の函館競馬場も多くの歓声が上がりました。個人的には、堅い予想ばかりになってしまった感はありますが、10Rの立待岬特別◎スリーアイランド(半兄が英国G1馬という良血3歳牝馬)、11Rの巴賞◎アラタ(昨年の札幌記念4着はG1級のメンバー)の勝利はすごくうれしかったです。
短期の函館出張2週間、取材させていただいた関係者の方々にこの場を借りて…、ありがとうございました。つたない内容でしたが、ご愛読いただき、ありがとうございました。明日から残り2週の函館開催は、舟元祐二記者が引き継ぎます。引き続き、よろしくお願いします。
今夜はアイリッシュダービー(愛ダービー)。ディープインパクト産駒オーギュストロダンの英愛ダービー制覇なるか。日曜から夜更かしです。【木南友輔】