堂々のダート王だ! 1番人気に推されたレモンポップ(牡5、田中博)が、史上4頭目の同一年フェブラリーS&チャンピオンズC制覇を達成した。

初の1800メートルに加えて試練の大外枠も、二の脚の違いでハナに立ってそのまま押し切った。今後は広がった選択肢の中から、国内外や距離などを見極めて最善のレース選択をしていく。2着は12番人気ウィルソンテソーロ(牡4、小手川)、3着は9番人気ドゥラエレーデ(牡3、池添)が入り、3連単は190万円超の高配当となった。

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初の1800メートルに試練の大外枠も、レモンポップはスタートから200メートルで勝負を決めた。坂井騎手は「この馬のリズムで。行けるなら行こうと思っていた」。マイルの距離でも先手を取れるダッシュ力で飛び出すと、鞍上は内を2度、3度と確認。無理なく内ラチ沿いへ寄せていき、そこで枠の不利はなくなった。直線も持ち前の粘りで後続を完封。中京開催10回目で初となる逃げ切りだった。鞍上は「高いハードルをこの馬の能力で乗り越えてくれた。堂々と、チャンピオンと言っていいと思う」と、その走りをたたえた。

大きなチャレンジを実りに変えた。田中博師が「期待と不安。不安の方が大きかった」という今回。課題克服へ中間はウッドでコーナー4つの調整を新たに取り入れ、より実戦に近い調教を重ねた。レース後は安堵(あんど)の表情で「大きな風船を触るような、ギリギリまで攻めた仕上げだった。やるべきことをやって勝てた。自分たちの想像をはるかに超えてくる馬。感謝しかないです」。陣営の工夫が、快挙をたぐり寄せた。

馬体も充実一途をたどる。デビュー2戦目後は約1年の休養も余儀なくされたが、徐々に成長。5歳の今年になって、さらにたくましくなった。「今年の夏を境に成長が大きく、完成に近いと思っていた。トモが立派になり、前駆の発達も追いついてきて脚もとも固まってきた。やりたい調教をやれるようになった」と師。レモンも、その調教に応えてみせた。

多くの課題を克服し、今後の見通しはさらに明るい。師は「この勝利で選択肢は広がった。これだけの馬なので海外も選択肢の1つ。(ドバイで敗れた)1200メートルもダメだとは思っていない。いいチョイスができたら」。成長を続けるレモンへの期待は、ますます膨らんでいく。【奥田隼人】

◆レモンポップ ▽父 レモンドロップキッド▽母 アンリーチエイブル(ジャイアンツコーズウェイ)▽牡5▽馬主 ゴドルフィン▽調教師 田中博康(美浦)▽生産者 オリヴァー・S・テイト夫妻(米国)▽戦績 14戦10勝(うち地方1戦1勝、海外1戦0勝)▽総収得賞金 4億8175万6000円(うち地方7000万円、海外0円)▽主な勝ち鞍 23年根岸S(G3)フェブラリーS(G1)南部杯(Jpn1)▽馬名の由来 レモンスカッシュ