善臣さん、長い間お疲れさまでした。
コラム「ヨシッ!! トミ」を始めるにあたり、私の3年先輩の故水島晴之記者に、「ウチで善臣のコラムをやりたいと思っているんだよね。どう思う?」と相談され、「いいんじゃないですか? でも、そんなことできるんですか?」と返答した思い出がある。もう35年ぐらい前の話だ。
当時、スポーツ紙の騎手コラムというものはゼロではなかったが、今ほどたくさんあったわけではない。弊紙で突然始まった若手人気スターのコラムに対する業界のアレルギー反応は想像以上だった。
美浦での調教中に善臣さんを密着取材していると
「ヨシトミ! お前、ニッカンにいくらもらってるんだ?」
という、やっかみというか、ねたみというか、嫌がらせの声があちこちからかかったものだ。そのとき、善臣さんはこう言って、場を和ませてくれた。
「100万だよ」
日刊スポーツが1本の原稿に100万円も払えるわけはない。笑いに包んで、一記者を守ってくれた、と今でも感謝している。善臣さん自身も、ファンに自分の言葉でいろいろ伝えたいという思いがあったのだろう。今では当たり前のことだが、当時は騎手がファンに本音を話す機会はまだそれほど多くはなかった。
今だから書けるが、私の目覚まし時計の電池切れでアラームが鳴らず(本当ですよ)、善臣さん取材の時間に寝坊したことがある。慌てて調教スタンドに向かった私に「さっき○○さん(専門紙記者)に話しておいたから、聞いて。○○さんには伝えるように言ってあるから」と言われ、救われたこともいい思い出だ。
善臣さんは私のことなぞ覚えてはいないだろうが、約40年の記者生活の、まさに「旬」の時期を彩ってくれた、大切な思い出深い取材対象だった。
これからは新しい世界で「ヨシッ!! トミ」らしさを発揮してください。【92~00年、12~17年中央競馬担当=栗田文人】

