JRA初の還暦ジョッキーがターフを去る。現役最年長60歳の柴田善臣騎手が引退を決断した。15日、JRAが発表した。本人から騎手免許の取り消し申請があり、18日付けで騎手免許を取り消す。
16日に会見を行う予定で、今後はJRAのアドバイザーに就任する。競馬学校騎手課程の1期生として1985年にデビュー。通算2341勝、JRA重賞96勝(うちG1・9勝)を積み上げた。42年目の今年は3勝を挙げるも4月に右肩を負傷。懸命なリハビリを重ねたが復帰に至らず、目標とした還暦での騎乗はかなわなかった。
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いつも穏やかな「ヨシトミさん」を、1度だけ不愉快そうな表情にさせてしまったことがある。14年安田記念はサダムパテックに騎乗予定も、レース週に急きょジャスタウェイへの乗り替わりが決まった。当時の世界レーティング1位の馬の主戦だった福永騎手が騎乗停止となり、騎乗経験があることから巡ってきた手綱だった。記者が深く考えないまま「プレッシャーはないのですか」と聞いたところ、「あるわけないだろ。だってジャスタウェイだぞ? 」と即答された。珍しいほど強い口調で。
レース後にその真意を理解できた。2着グランプリボスとのたたき合いを制して任務を完了。不良馬場でも中団でどっしり構え、残り30メートルでハナ差だけ前に出た。「世界一の馬。リズムよく走らせればきっと大丈夫と思っていた」とひょうひょうと振り返った。誰よりも馬の力を信じると同時に、その能力を引き出せる自負も持っていたはずだ。
勝利したレース後に手記を依頼した。最も強調したのは周囲への感謝だった。「俺、本当に不義理が嫌だから。今回はなんとしても結果を出したかったんだよ。乗り替わりの件で関わってくれた関係者全員のために」。誰もいない地下通路で熱弁する姿が印象に残っている。その上で「若くて元気のいいやつがたくさんいるのに、47歳の自分に声をかけてくれる。これほどうれしいことはないよ」と1人の騎手としての喜びも同時にかみしめていた。
「いくつになっても馬に乗るのが楽しい」と言っていた人が、ついにムチを置く。ヨシトミさん、本当にお疲れさまでした。【09~14年中央競馬担当=松本岳志】

