ビワイチ(琵琶湖1周)を走ってみたいなと思っていたら、おあつらえ向きのブルベ(長距離耐久サイクリング)があった。ランドヌ東京主催の「BRM918東京1000いってこいビワイチ」。甲斐の国の石和温泉をスタートし、富士川を南下した後、興津、御前崎、浜名湖、岡崎、名古屋、関ケ原を経由。米原で琵琶湖にどーんとぶつかり左回りで1周して同じコースを石和温泉まで帰る。


距離はなんと1000キロ。制限時間は75時間。つまり丸3日プラス3時間で、休憩や信号ストップなどを含めたグロス平均時速は13・4キロ。600キロまでのブルベがグロス平均時速15キロなので、時間的には少し楽になる。峠はなくほとんどが平坦で「何が何でも1000キロ完走を目指すルート」だという。


「いってこいビワイチ」のコース
「いってこいビワイチ」のコース

1000キロに挑戦してみたい気持ちはあるが、まあ無理だろうね。ということで、琵琶湖を1周した後、米原でリタイアすることにしてエントリーした。これでも600キロを走ることになるが……。ただ、もしかしてその時点で走る気力があるなら先へ行ってみようかという色気も少し持っていた。へたれても山の中ではないのでホテルも多いし、新富士までならいつでも新幹線に乗って帰ることができるという安心感もある。


とりあえず1000キロを走るとして走行計画を立てた。主催者側は330キロ地点、670キロ地点となる名古屋・金山付近を(着替えなどを事前に送る)ドロップバックや仮眠場所として往復とも使えるコース設計としたようだが、これまでの経験から300キロを過ぎると睡魔が襲ってくるので330キロはちと長い。そこで260キロ地点の豊橋、520キロの大津、770キロの浜名湖でホテルを取り、それぞれ4時間ずつ滞在して仮眠することにした。これだと走っている時のグロス平均時速が16・5キロであれば1000キロを60時間で走れ、仮眠の12時間をプラスしてもまだ3時間残る計算となる。頑張れば仮眠時間も増える。う~ん、何となく走れそうな気がしてきたぞ。


ただ、この走行計画には大きな欠点があった。米原到着は2日目のお昼前になり明るいうちに琵琶湖を走って大津まで行けるのだが、次の出発がその日の深夜となるのでビワイチ起点の瀬田唐橋(せたからはし)や第2なぎさ公園にある「サイクリストの聖地」通過が真夜中となってしまう。せっかく琵琶湖まで行くのにこれじゃ面白くない。何とかビワイチ全てを明るいうちに走りたいとあれやこれや考えたが、自分の走力を考えるとうまい方法は思いつかなかった。


琵琶湖・第2なぎさ公園にある「サイクリストの聖地」の碑。17年に設置された
琵琶湖・第2なぎさ公園にある「サイクリストの聖地」の碑。17年に設置された

どうしようかと悩んでいる時にもうひとつ、衝撃の事実を知った。今回のブルベはほとんどが時刻不問の通過チェックだったこともあり、最終的に1000キロを75時間で走ればいいと思っていた。ところが浜名湖で仮眠していたら836キロの2つ目の御前崎のコントロールポイント(PC=コンビニのレシートで通過時刻チェック)のクローズ時間に間に合わないことが判明した。


実は1000キロのブルベといっても、600キロまではグロス時速15キロが必要で、それ以降で条件が緩くなるのだ。計算するとグロス平均時速はここまで13・8キロが必要。ここをクリアすれば、残り164キロを14時間21分、つまりグロス平均時速は11・5キロで走ればいいことになり仮眠もできる余裕が生まれる。


大津から御前崎のPCまでは316キロ。浜名湖で仮眠せず一気に走れば間に合うが、周囲に手ごろなホテルはなく40キロ先の焼津まで行かなければならない。終盤にきての350キロ一気はつらい。やはりどこかで300キロ以上は走らないと完走できない仕組みになっているのか。甘くないね。


どうするかは大津で考えよう。そう決めて、豊橋、大津のホテルを予約。着替えは大津に往復宅急便で事前に送った。大津を走り出した時、完走したければ焼津に、時間オーバーでも完走するなら浜名湖に直前に宿を取ることにした。空きがなければ野宿かな。


12日午後、輪行で石和温泉駅へ
12日午後、輪行で石和温泉駅へ
12日午後、石和温泉駅到着
12日午後、石和温泉駅到着

スタート時間は9月10日午前6時~23日午前6時の間で各自任意で選択となっており、3連休は道も混むかなと思い13日火曜日の朝出発することとし、前日に輪行で神奈川県央の自宅から石和温泉に向かった。天気予報は1週間ほど前から付いていた雨マークが直前に消え、走行する各地とも晴れ予想となっていたが、万が一に備えレインウエアの上着だけは持って行った。他には防寒用のアームウォーマー、レッグウォーマー、薄手のウインドブレーカー、充電器など。もちろん、途中リタイアに備え輪行袋もしっかりサドルバックに詰め込むと、重量は2キロ強になった。(この項続く)【石井政己】