30日間で3700キロをE-Bike(YAMAHA WABASH-RT)で走り切り、佐多岬~宗谷岬の日本縦断を果たした、旅行家藤原かんいち。前例のないE-Bikeによるチャレンジ。運動不足の61歳の中年男にできるのか!? 一体どんな旅だったのか!? 激動の30日間を旅日記で振り返ります。


敦賀の赤レンガ倉庫前で見つけた『恐竜博士像ベンチ』
敦賀の赤レンガ倉庫前で見つけた『恐竜博士像ベンチ』

 Day15 2022/05/30

E-Bikeの盗難を心配して屋内に保管してくれた、ビジネスホテル山形の経営者さんに感謝、お礼を言って走り出す。今日は5月30日、佐多岬を出発して15日目になる。30日間で日本縦断が目標なので半分来たことになる。ここまでの走行距離は約1700km。前半に少しでも距離を稼いでおこうとかなり頑張って走ったのに、思ったほどは延びていない。改めて30日間日本縦断というハードルの高さを実感する。

いつも宿泊場所はその日の進み具合もあるので、当日決めるのがほとんどなのだが、今日は金沢市内にある『ゲストハウス・ポンギー』に予約済み。13年前の旅で宿泊して以来、金沢の宿泊場所といえばここ。この宿の一番の魅力はオーナーの「まさきさん」。僕と同じ歳の普通のおじさんなのだが(笑)とにかく明るくて気さく。初めて会った時からとても気が合い、すぐ友達になった。その後何度かSNSでやり取りしているが、直接会うのは久しぶりなのでとても楽しみ。


敦賀市の中心商店街には松本零士さんの『銀河鉄道999』と『宇宙戦艦ヤマト』の登場人物のブロンズ像がある
敦賀市の中心商店街には松本零士さんの『銀河鉄道999』と『宇宙戦艦ヤマト』の登場人物のブロンズ像がある

敦賀の市街地を抜けると駿河湾に出た。左手に日本海を見ながら北上する。国道8号と国道305号の分岐点、どちらのルートでも金沢方面へ行けるのだが、どうせ走るなら海側の方が絶対に気持ちいいと思い、『しおかぜライン(国道305号)』へ入ってゆく。名前の通り海が近く、潮風を感じながら、ご機嫌でペダルをこぐ。

飲み物でも買おうかと、コンビニの駐車場に入ると、日本一周のボードを掲げた原付バイクが止まっていた。声をかけると20代の男の子、希望に満ち溢れた瞳、熱量のあるおしゃべりは聞いていて気持ちがよかった。北上中だというので、またどこかで会うかもしれない。最後にインスタを交換して別れた。


南越前町河野では『北前船主の館右近家』など、繁栄した当時をたたずまいを見ることができる
南越前町河野では『北前船主の館右近家』など、繁栄した当時をたたずまいを見ることができる
日本海沿いには小さな港が点在している
日本海沿いには小さな港が点在している
コンビニで出会ったバイクで日本一周中のやまとくん。今も旅は続いている
コンビニで出会ったバイクで日本一周中のやまとくん。今も旅は続いている

越前海岸は絶壁が多くトンネルが連続するが、一つ一つは短くて、車も多くないのでそれほど恐怖感はなかった。越前岬を過ぎてしばらく行くと、大きな駐車場の一角に黄色い看板に『バナナジュース』と書かれた小さな売店があった。このあたりの看板、のぼりといえばほとんど『越前ガニ』。そこにいきなり『バナナジュース』の看板、思わずブレーキレバーを握った。

そこはバナナジュース専門の『BananaBoy』というお店だった。基本的にメニューはオリジナルプレーンのレギュラーサイズ&ビッグサイズのみ。そこに越前きなこや黒ゴマ、チョコレートなどのトッピングをするようだが、僕はストレートに味わいたいのでプレーンのビッグサイズにした。今日は暑いし、自転車で体を使っているので、バナナジュースはピッタリ。飲んだ瞬間、バナナの甘さが口いっぱいに広がる。うまい! 冷たくておいしい上にビタミン&エネルギー補給までできちゃうんだから、最高だ。日本海を眺めながら幸せな時間を過ごした。


日本海を眺めながら北上。天気も良く最高の気分
日本海を眺めながら北上。天気も良く最高の気分
越前岬の近くにある花ゆめの駐車場で見つけた『夢越前』の歌の碑
越前岬の近くにある花ゆめの駐車場で見つけた『夢越前』の歌の碑
冷たく甘いバナナジュースで栄養補給。これであと100キロは走れる(笑)
冷たく甘いバナナジュースで栄養補給。これであと100キロは走れる(笑)

次は柱状節理の断崖絶壁の海岸が続く『東尋坊』へ立ち寄る予定だったが、西の空を見ると雨雲がすぐそこまで迫っている。今にも降り出しそうなので今回はパスとする。そのまま金沢を目指して国道305号を北上。加賀市で国道8号に合流する。ここからは国道8号一本で金沢市まで行けると思ったら、自転車通行不可のバイパスが現れストップ。迂回を余儀なくされる。E-Bike旅をしてはじめて、トンネルやバイパスは自転車通行禁止のところが意外と多いこと知った。

スマホのグーグルマップで別のルートを探す。一本で行ける道はないので、一般道を『あみだくじ』のように、つないで進んでゆく。複雑だと間違いやすいので、こまめに止まってスマホで確認する。これがかなり面倒くさい。だがこれを怠って適当に走っていると、さらに面倒くさい状況に陥ることが多々ある(経験者は語る 笑 )ので、スマホでしつこいくらい確認して進んでゆく。

8時過ぎ。懐かしきゲストハウス・ポンギーが見えてきた。先に到着していたカメラマンの平塚くんから情報が入っていたようで、外でまさきさんが待っていた。「まさきさん、会いたかったー」「かんさん、久しぶりー!」再会を喜び、がっちりハグ。中年のおじさんのハグなど見たくないと思うけど、ここは我慢してください(笑)

今回の再会には特別な理由があった。実はまさきさん、昨年の8月、心筋梗塞が発病。心臓の半分が壊死する大きなダメージを負った、階段を上るもの大変な状態がしばらく続いていたのだ。僕も6年前に旅先で心筋梗塞、救急車で病院に運ばれ緊急手術、心臓にステントを入れた。まさきさんよりはダメージは少なかったので、自転車旅もできているが、同じ体験をしているので、今回は絶対に会いたいと思っていた。

今は普通に歩けるがおそらく大変な思いをしたと思う。完治したわけでもないけれど、以前と変わらない笑顔のまさきさんに会えたことがうれしかった。宿に入り荷物を降ろすと、病気のことはもちろん、ゲストハウスのこと、僕のE-BIKE旅のこと、金沢の最近、みんなの近況など矢継ぎ早におしゃべり、話は尽きなかった。


まる一日かけて越前海岸の旅をE-Bikeで楽しんだ
まる一日かけて越前海岸の旅をE-Bikeで楽しんだ
金沢の『ゲストハウス・ポンギー』のオーナーまさきさんと一緒にポンギーのPポーズをとる
金沢の『ゲストハウス・ポンギー』のオーナーまさきさんと一緒にポンギーのPポーズをとる

■日付:2022年5月30日

■走行距離:161.9km

■ここまでの総走行距離:1,859km

■ルートマップ