ロサンゼルス（LA）にはステーキやシーフード、イタリアンからカリフォルニア・キュイジーヌまで様々なグルメが楽しめる高級レストランがたくさんありますが、実は意外にもニューヨークやサンフランシスコに比べてミシュラン星を獲得しているレストランが少ないことで知られています。LAは場所柄カジュアルなお店が多く、ミシュランが評価しやすい高級店が少ないとも噂されてきましたが、実は2008年に発売された2009年度版を最後にロサンゼルス版は発行されていないのです。当時発売されたミシュランガイドでは、紹介された310軒のうちアカデミー賞の公認シェフとして知られるウルフギャング・パック氏の「スパゴ」など4軒が2つ星、16軒が1つ星でしたが、3つ星の該当はありませんでした。そしてそれから10年を経て、今年はなんと初めてカリフォルニア版ミシュランガイドが発売されることが決まり、このほど2019年度の星印の選定が発表されました。

Urasawaは高級ショッピング街ロデオドライブにあるこの建物の２階にあります

これまではカリフォルニアの中でも食のレベルが高いことで知られるサンフランシスコや北部のワインカントリーを中心とした「サンフランシスコ・ベイエリア」のミシュランガイドが発売されていましたが、今回発表されたカリフォルニア版はLAやその南部オレンジカウンティ、さらにサンディエゴやサンタバーバラなど周辺都市にまで対象エリアを拡大。カリフォルニア版には657の推奨店舗が紹介され、そのうち3つ星が7軒、2つ星が14軒、1つ星が69軒で計90のレストランが星を獲得しました。そのうち南カリフォルニアからは1つ星が21軒、2つ星が6軒という結果でしたが、LAでは新たに18のレストランが星を獲得しました。特筆すべき点は、そのうち日本食レストラン3軒が2つ星、8軒が一つ星を獲得したことです。

看板もないので見逃してしまいそうなn/nakaは普通の住宅街にあります。建物横の庭木が日本らしさを演出

鮨 銀座おのでらも看板はないので、素通りしてしまいそうな外観

2つ星を獲得したのは、ウエストハリウッドのLA屈指のショッピングエリアにある「鮨　銀座おのでら　ロサンゼルス」、ウエストLAにある創作懐石「n／naka」、ビバリーヒルズのロデオドライブにある「Urasawa（浦澤）」の3店舗。「鮨　銀座おのでら　ロサンゼルス」は、2016年にオープンした「銀座から世界へ」をコンセプトに「鮨」を通じて日本の洗練された文化を世界に発信している「銀座おのでら」のロサンゼルス支店で、旬の食材を使った繊細な鮨が現地のメディアでも度々紹介される人気店。また、「Urasawa」は完全予約制の全米で2番目に値段が高いと言われる超高級すし店ですが、寿司職人でオーナーシェフの浦澤氏が創り出す料理は芸術品と評されています。そして「n／naka」は、看板のない隠れ家的存在のコース料理のみを出す創作懐石レストラン。住宅街の一角にあるため初めて訪れる人は“こんなところに？”と驚くと思いますが、日本人女性シェフのニキ・ナカヤマさんの手掛ける料理は「芸術的」とロサンゼルス・タイムズ紙やザガット（世界主要都市のレストランやホテルなどのサービス内容や評価をまとめたガイド）でも高い評価を受けています。

店名が書かれた暖簾が目印

１つ星を獲得したシュンジもローカルエリアにある普通の外観のお店なので、一見するとここがミシュランの星レストランだとは分からないかも

1つ星の日本食レストランには、LAのダウンタウンに16年にオープンした米国人シェフが手掛ける割烹スタイルのレストランバー「シブミ」や江戸前料理に定評があるおまかせダイニング「Qスシ」、オーナーシェフの中尾俊二氏が創る四季折々の旬の食材を使ったおまかせ料理が高い評価を受けている「シュンジ」など洗練されたLAらしいお店が名を連ねています。他にもビバリーヒルズにあるパック氏の高級ステーキハウス「カット」や「アイアン・シェフ・アメリカ（アメリカ版料理の鉄人）」など多くのテレビ番組にも出演するセレブシェフ、カーティス・ストーン氏が14年にオープンさせたビバリーヒルズの「モード」なども一つ星に名を連ねています。LAも近年は食のレベルが格段に上がったと言われ、新鮮な食材を使った革新的で美しい料理を楽しめるレストランも増えていますので、LAを訪れる機会があればカリフォルニア版ミシュランガイドを活用してみてはどうでしょう。（米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も）

エレベーター横にはUrasawaの小さな看板が