健康的な食生活への関心や宗教的な理由だけでなく、昨今は地球温暖化や動物愛護などを理由にビーガン(完全菜食主義者)食を実践する人が増えています。11月1日は「世界ビーガンデー」でしたが、ここロサンゼルス(LA)でも肉や魚、卵など動物性たんぱく質を一切摂取しないビーガンが年々増えており、それに伴ってビーガン市場も拡大傾向にあります。

英国で設立されたビーガンソサエティーの設立50周年を記念して1994年制定された世界ビーガンデーですが、欧米に比べてビーガン人口が少ない日本ではあまりなじみのない人も多いと思いますが、今さら聞けないビーガンとベジタリアンの違いやLAのビーガン事情をレポートしたいと思います。

「月曜日は肉を食べない日」とする「ミートレスマンデー」という食生活改善の運動も活発化しています
「月曜日は肉を食べない日」とする「ミートレスマンデー」という食生活改善の運動も活発化しています

まずは意外と知っているようで知らないビーガンとベジタリアンの違いについて簡単に紹介します。ベジタリアンは基本的に肉や魚を食べずに野菜を中心とした食生活をしている人たちを意味しますが、ビーガンはそれに加えて卵や乳製品、はちみつなども一切口にしません。完全菜食主義として知られるビーガンは、食品そのものだけでなく、魚醤やカツオのだし汁、豚の皮が原料のゼラチンなどもNGで、たんぱく質は大豆など植物由来のものからのみ摂取が可能です。つまり単に魚や肉など動物性たんぱく質を避けるだけでなく、牛乳やチーズ、ヨーグルトもNGですし、それらを使ったケーキやアイスクリーム、カツオ出汁の味噌汁やラーメン、肉のエキスを使用したカレーライス、マヨネーズ、バターや乳製品を使ったパンなども食べることができません。つまり普段、普通の食事をしている人が食べている食材や食品の多くを食べることができないのです。

たんぱく源として豆腐は大人気で、スーパーマーケットにはさまざまな種類の豆腐製品が販売されています
たんぱく源として豆腐は大人気で、スーパーマーケットにはさまざまな種類の豆腐製品が販売されています

また、一概にビーガンと言っても健康のために実践している人もいれば、動物愛護や二酸化炭素排出による気候変動など思想的な理由からビーガンになった人もいます。また、動物の命を尊重するために食事だけでなく、レザーや毛皮などの皮製品を身に着けることも避けるエシカル・ビーガンと呼ばれる人たちもいます。

では、LAのビーガンの人たちは実際にどのような食生活を送っているのか気になるところだと思いますが、昨今はビーガンの最先端をいくLAでは驚くほど様々なビーガン料理が存在しており、「フェイク肉」に代表されるようにスーパーマーケットでもビーガン向けの様々な食品や加工品が販売されています。LAで食べられる意外なビーガンフードをいくつか紹介します。

上は普通のチキンラーメン、下はベジタブルブロスのみで作ったビーガンラーメンで、トッピングにはチャーシューの代わりに豆腐がのっています
上は普通のチキンラーメン、下はベジタブルブロスのみで作ったビーガンラーメンで、トッピングにはチャーシューの代わりに豆腐がのっています

●ビーガンラーメン

ラーメンと言えば豚骨や鶏ガラスープなどが一般的ですが、これらはもちろんビーガンの人にはNGな食品です。LAの多くのラーメン店で近年は椎茸など野菜や海藻(煮干しやカツオはNGですが、昆布は海藻なのでOK)だけを使ったラーメンが食べられるようになってきました。また、LAではトレンドになっているインスタントラーメンも、スーパーマーケットでは「椎茸ラーメン」などビーガン向けのものが販売されています。

見た目もきれいなビーガン寿司はスーパーマーケットでも手に入ります
見た目もきれいなビーガン寿司はスーパーマーケットでも手に入ります

●ビーガン寿司

ビーガンの人は寿司ネタの魚はもちろん、カリフォルニアロールなどに使われるカニカマなどの加工品もNGですが、昨今はビーガン向けの寿司メニューもかなり増えています。かっぱ巻きやお新香巻きだけでなく、野菜や海藻、マンゴーなどの果物まで使った見た目もきれいな様々なビーガン寿司を提供するニューヨーク発のビーガン寿司専門店「ビヨンドスシ」がLAに進出するとうわさされていますし、今ではスーパーマーケットでもビーガン寿司は手軽に入手できます。

見た目は普通のチキンですが、植物性たんぱく質から作られたフェイクチキンも売られています
見た目は普通のチキンですが、植物性たんぱく質から作られたフェイクチキンも売られています

●ビーガンフライドチキン&ビーガンバーガー

フェイク肉が大ブームのLAでは、植物性たんぱく質のみで作ったフライドチキンもハンバーガーやホットドックもあります。バーガーキングなど大手ファストフード店でもフェイク肉を使った「ビヨンドバーガー」が買える時代になっており、普通のハンバーガーと見た目も味もほとんど変わらないビーガンバーガーを手軽に楽しむことができます。

ドーナツ店でもビーガン向けドーナツには「V」マークが付けられていたりします
ドーナツ店でもビーガン向けドーナツには「V」マークが付けられていたりします

●ビーガンスイーツ

ドーナツやカップケーキなどスイーツやアイスクリームでも、昨今は卵や乳製品を使用しないビーガン向けの商品を販売するお店が増えています。バターの代用としてココナッツやアボカドオイルを使ったビーガンバター、牛乳の代用としてココナッツミルクやアーモンドミルク、液体のフェイク卵も販売されており、パンやペイストリーでも「ビーガン」表示があるものが増えています。

牛乳の代用品として人気が高いアーモンドミルク
牛乳の代用品として人気が高いアーモンドミルク

●ビーガンチーズ&ビーガンヨーグルト

乳製品を一切使わずにカシューナッツから作るビーガンチーズや豆乳、アーモンドミルクから作るビーガンヨーグルトはスーパーマーケットで購入できます。また、ビーガンチーズを使ったビーガンピザも販売されており、冷凍ピザでもビーガン向けの物が色々あります。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)