コロナ禍によるステイホームで需要が増したものの1つが、ウーバーイーツなどに代表されるフードデリバリーサービスですが、感染予防対策から人との接触を避ける「コンタクトレス」が求められる中、人間の代わりにロボットがその業務を担う時代がすぐそこまで来ているようです。2019年秋頃からシリコンバレーやサンフランシスコ近郊で自動運転による配達ロボットの配送サービスが本格化しているというニュースを見聞きしていましたが、コロナ禍による外出自粛や飲食店の店内飲食禁止などによってその需要は一気に高まり、ついにここロサンゼルス(LA)でもロボットの導入が始まりました。

サンタモニカの中心部を走行する配達ロボット
サンタモニカの中心部を走行する配達ロボット

LA近郊では昨年4月にウエストハリウッドでフードデリバリーアプリのPostmatesが配達ロボットを3カ月間試験的に導入していましたが、今年に入ってコロンビア発のスタートアップ「Kiwibot(キウィボット)」社のロボットがLA北部の一部地域や大学キャンパスで試験運転を始め、ついにサンタモニカでもサービスがスタートしました。ABCテレビのローカルニュースによると同社はMealMeというフードデリバリーアプリと提携して配達を行っており、アプリを通じて注文するとクーラーボックスのような形をした小型ロボットが商品をピックアップして配達し、目的地に到着すると注文者の携帯に配達の知らせが届き、商品を取り出すためのロック解除コードが送られるシステムになっているといいます。サービスを利用しているレストランによると現在は店舗から2マイル(約3.2キロ)圏内への配達のみ可能だそうですが、将来的には配達範囲の拡大にも期待が持たれています。

Kiwibotは2017年にサービスを開始して以降、現在まですでに世界各地で15万件以上の配達業務を行っており、カリフォルニア大学バークレー校では寮で暮らす学生向けにキャンパス内で200台のロボットが活躍しています。車両に搭載されたカメラやセンサーによって周囲の人や障害物、信号などを認識して自動運転を行う機能を備えていますが、法的な理由からロボットを完全に自動運転化させることはできないため、遠隔でスーパーバイザーと呼ばれる人間が安全に運行できるよう各ロボットの監視を行っているそうです。人間が配達しない分だけ人件費を削減でき、渋滞などにも左右されないことから、安くて早いサービス提供が可能になります。また、注文する側にとっても人と一切接触せず安全に商品の受け渡しができるだけでなく、配達員へのチップも不要になるメリットもあります。さらに自動車の排出ガスもゼロになることから、これからの社会に求められるエコフレンドリー思想とも合致し、配達サービスの在り方そのものも今後大きく変わっていきそうです。

同社によると今後は全米各地の大学やショッピングモール、オフィス街だけでなく、テーマパークで乗り物の列に並んでいる人への配達なども視野に入れて事業を拡大していく予定だといいます。LAでは今年前半までに100台の導入を目指しており、年内には400台にまで増やして配達地域も広げていく方針を示しています。

LAで本格導入が始まった配達ロボットのニュースを伝えるABCテレビのサイト
LAで本格導入が始まった配達ロボットのニュースを伝えるABCテレビのサイト

コロナ禍で世界が一変した現在、デリバリーは生活に欠かせないサービスとなりましたが、今後は食事だけでなく、日用品や医薬品などもロボットが当たり前のように配達してくれる時代がやってきそうです。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)