新型コロナウイルスの変異種デルタ株による感染が止まらないアメリカでは、早くも来月20日から新型コロナワクチンのブースター、いわゆる3回目の追加接種をスタートすることが発表されました。デルタ株への感染が確認された重症者のほとんどがワクチン未接種者で子供の感染も増えていることが伝えられる中、接種完了後に感染する「ブレークスルー感染」の報告も急増しており、時間の経過と共にデルタ株に対するワクチンの有効性が低下し、無症状で知らぬ間に他人に感染させている可能性が指摘されているためです。ある研究ではワクチン接種完了から3カ月以内に予防に対する有効性が低下するという結果も発表されており、ワクチンの持続性をさらに強化する必要性があるというわけです。米疾病対策センター(CDC)は、全国民を対象に2回目の接種を終えてから8カ月後にブースター接種を行う必要があるとしており、医療従事者や介護施設の入所者ら初期に接種を終えた人たちから順次3度目の接種が始まることになります。
米食品医薬品局(FDA)は病気などで免疫が低下している人を対象に重症化や死亡のリスクを下げるために3回目の接種を認めたばかりですが、対象を全国民へと広げた形です。イスラエルではすでにブースター接種が始まっていますが、3回目の接種の必要性を巡っては効果が分からないとして専門家の間でも意見が分かれています。アメリカでは現時点でワクチン接種が可能な12歳以上のおよそ6割が接種を終えていますが、世界全体で見るとまだ多くの国でワクチンが普及しておらず、日本を含めて1回も接種できていない人がたくさんいます。そんな中、一部の富裕国だけが自国民の免疫をさらに高めようと3回目の接種を優先することは、ワクチン供給を巡る格差をさらに広げ、脆弱(ぜいじゃく)な人々を見捨てる身勝手な行為だと批判が出ています。世界保健機関(WHO)も追加接種は「救命胴衣をすでに着用している人にさらに新たな救命胴衣を与えるようなもの」だと批判しており、救命胴衣を着けずにおぼれる人を放置しているとして現時点でのブースター接種開始には反対の立場を示しています。また、ワクチン接種の不平等がさらに悪化することによって世界全体が集団免疫を獲得するよりも前に危険な新たな変異種が出現するリスクが高まると警告する科学者もいます。
一方、ここロサンゼルス(LA)でも、8月に入ってからは陽性者のほぼ全員がデルタ株の感染で、ブレークスルー感染も全体の30%に及んでいることが明らかになっています。そんな中、今週から新学期がスタートした教育現場でもワクチン接種の義務化が加速しています。LA郡にあるカルバーシティーの統一学校区では、ワクチン接種が可能な12歳以上の全生徒と全職員に対して11月半ばまでに接種を完了するよう求める計画を発表。同学校区内の7100人の生徒と900人の職員は、11月19日までに接種完了の証明書の提示が求められることになりました。現在は生徒と職員はマスク着用と週1回の検査が義務付けられていますが、1人が感染すると多くの児童や教師が濃厚接触者となり、再び対面授業がストップする可能性があるため、安全に対面授業を行うためにはワクチン接種が必要不可欠だと判断したようです。ワクチン義務化はLAの学校区では初となりますが、今後は他の学校区でも導入に踏み切るところが出てきそうです。カリフォルニア州ではすでに同州の全教員と学校職員にワクチン接種または定期的な検査で陰性を証明することを義務付けており、コロナ禍以降オンラインや対面とオンラインを織り交ぜたハイブリッド授業を行ってきた子供たちは1年半ぶりとなる学校の全面再開を喜んでいるようです。
カリフォルニア州ではすでに屋内での1000人規模のイベントではワクチン証明または72時間以内の検査での陰性証明書の提示が義務付けられており、3度目の接種のタイミングを巡って今後は混乱が生じる可能性も出てきそうです。
(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)




