新型コロナウイルスのワクチン接種を巡って国際問題にまで発展した男子テニス世界王者のノバク・ジョコビッチは、最終的にオーストラリアのビザを2度に渡って取り消され、17日に開幕する全豪オープンを目前に16日に強制送還されました。アメリカのメディアも一連の騒動を大々的に伝えていますが、3月には舞台をオーストラリアからアメリカに移して再び同様の問題が勃発する可能性も出ています。ジョコビッチは3月7日にここカリフォルニア州インディアンウェルズで開催されるBNPパリバ・オープンに出場することが予定されており、その後はフロリダ州に移動してマイアミ・オープンでもプレーすることが見込まれています。しかし、アメリカへの入国は今回騒動になったオーストラリア同様、外国人にはコロナワクチンの接種を義務化しており、ワクチン未接種のジョコビッチが特例として入国が認められるかどうかは不透明です。さらに今回の騒動の影響で、アメリカの入国が拒否される可能性が高まったとの見方もあり、8月に開催される4大大会の1つ全米オープンへの出場も微妙な状況になっています。

ワクチン未接種のジョコビッチは、過去のコロナ感染を理由にワクチン接種免除の特例でオーストラリアに入国したものの、医学的理由を証明する書類の不備で入国が拒否されたことが騒動の発端でしたが、本来なら2回の接種が必要なワクチンを打っていなかった場合、アメリカ入国はどうなるのか現状を紹介します。

アメリカでは昨年11月8日より、アメリカ市民並びに永住権または移民ビザ所持者を除くすべての渡航者は、アメリカ行きの飛行機に搭乗する前に新型コロナワクチン接種を完了した証明書(2回目の接種から2週間が経過していること)を提出することが義務付けられています。(※1月16日現在の情報で、変更になる可能性があります)ここで注目すべきポイントは、証明書の提示はアメリカ入国時ではなく、アメリカ行きの飛行機に搭乗する前だということです。実際に日本からアメリカに入国した人に確認したところ、チェックインカウンターで証明書を提示したものの、入国審査では証明書を確認されることは一切なかったといいます。つまり、搭乗時に市民権がない外国人は永住権か移民ビザを保持していない限り、その時点で証明書が提示できなければ飛行機に乗ることはできず、渡米できないということになります。ちなみ現在、新規で永住権並びに移民ビザを申請するには、ワクチン接種が義務付けられています。

ただし、ジョコビッチがオーストラリア入国に際して特例でビザが発給されたように、例外が設けられています。米疾病予防管理センター(CDC)のサイトによると、以下の場合は特例として入国が認められるとしています。

・18歳未満の子供

・医学的にワクチン接種が不可能な方

・特定のコロナワクチンの治験参加者

・人道的または緊急を要する渡航者で接種が間に合わないと判断される場合

・米軍関係者またはその配偶者と18歳未満の子供

などとなっており、ジョコビッチが主張した過去のコロナ感染歴は理由しては認められていません。また、医学的な理由で接種ができない場合は医師の診断書の提出などが求められ、認められるケースはごく少数であると言われています。ワクチンの種類に関しては、アメリカ食品医薬品局(FDA)が認可したワクチンと世界保険機構(WHO)が緊急承認したリストに掲載されたワクチンが対象となっています。一方、入国後は隔離の必要はなく、空港到着後から自由に行動することができます。

CDCのサイトに掲載されているワクチン免除の特例の一覧
CDCのサイトに掲載されているワクチン免除の特例の一覧

報道によると、BNPパリバ・オープンの主催者は出場選手にワクチン接種を義務化していないと言いますが、もしジョコビッチが今後もワクチン未接種のままで同大会に出場するには、アメリカ行きの飛行機に乗るために何らかの医学的理由より接種できないことを証明し、認められる必要があります。さらに、昨年12月6日からは、ワクチン接種の有無に関わらず、出国の1日以内に受けた検査での陰性証明書を航空会社のチェックイン時に提出する必要もあります。ここをクリアしない限りは機上の人にはなれないため、今回のように入国後に身柄を拘束されて強制送還されることはないと思われますが、今後のプレーへの影響を考え、ワクチンを接種するのかどうか注目が集まっています。

今回の騒動が3月にカリフォルニアで開催される大会出場に影響する可能性を伝える記事
今回の騒動が3月にカリフォルニアで開催される大会出場に影響する可能性を伝える記事

ちなみに、BNPパリバ・オープンは2020年はコロナ禍で中止となり、昨年は10月に延期されて開催されましたが、ジョコビッチは直前に欠場を決めており、もし出場すれば3年ぶりとなります。もし、2年連続欠場となった場合でも夏には全米オープンが控えており、全豪オープンの騒動を踏まえてアメリカ政府がビザを発給しない可能性も出ており、騒動の余波はまだしばらく続きそうです。(ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)