新型コロナウイルスの第7波が猛威を振るっている最中、欧米を中心に感染例の報告が相次ぐ「サル痘」の感染者が日本でも初めて報告されましたが、アメリカでもより感染力の強いオミクロン株の変異種BA.5の拡大と共にサル痘の感染者も急増しています。米疾病対策センター(CDC)によると26日現在アメリカでは3000人を超えるサル痘の感染者が出ており、ここロサンゼルス(LA)でも22日までに120人ほどの感染が報告されています。

性質の異なるこの2つのウイルスが同時に感染拡大する中、カリフォルニア州北部ベイエリアではついにコロナとサル痘にダブル感染した男性も出現しており、コロナとサル痘の両方に同時感染する可能性も否定できない状況になっています。コロナに加えてサル痘の感染にも注意が必要となった今、どのような備えや知識が必要なのかアメリカで分かっている現状をまとめてみました。


コロナとサル痘のダブル感染を伝えるニューヨーク・ポスト紙
コロナとサル痘のダブル感染を伝えるニューヨーク・ポスト紙

■サル痘とは?

1970年にザイール(現コンゴ共和国)でヒトでの感染が初確認されたサル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹疾患です。アフリカに生息するリスなどげっ歯類が感染源の可能性があるとされていますが、今年5月以降、欧米諸国を中心に渡航歴のない感染者が急増しています。世界保健機構(WHO)は23日に「公衆衛生上の緊急事態」を宣言しており、日本でも欧州への渡航歴のある30代の男性の感染が初めて確認されています。


■どのように拡散する?

サル痘はコロナウイルスと同様に感染している人から人へと拡散するウイルスですが、せきやくしゃみなど飛沫で感染するコロナとは異なり、主に皮膚と皮膚の接触で拡散すると言われています。感染している人と親密な接触をすることだけでなく、寝具やタオルなど感染者が触れた物を通じて感染が広がることも分かっており、CDCによると家族間や身近な人の間での感染例も報告されているそうです。また、感染した動物から人へと感染することもあるとLA郡保健当局は警告しています。


■市中感染の可能性は?

CDCによると26日現在3487人の感染が報告されていますが、その多くは海外への渡航歴があり、感染者との密接な接触があったとされていますが、感染経路の分からない市中感染も確認されています。感染者の多くは男性ですが、子供2人や妊婦の感染も報告されており、感染者の多いニューヨークやカリフォルニア州では市中感染が始まっている可能性も出ていますが、CDCはまだ一般的な広がりのリスクは低いとの見解を示しています。


■症状は?

LA郡保健当局によると、主な症状としては全身の発疹や皮膚にできる斑点、水泡などの他、発熱や頭痛、リンパ腺の腫れ、筋肉痛などがあるといいます。また、実際に感染した人によると、倦怠感や水泡ができた個所の強い痛みなども報告されています。WHOによると潜伏期間は通常7日~2週間で、発症後は1日~5日ほど発熱などの症状が続き、その後に発疹が出るといいます。


サル痘の症状について報じるNBCの番組Todayのニュース記事
サル痘の症状について報じるNBCの番組Todayのニュース記事

■予防策は?

CDCによると感染を予防するには以下の対策が有効だとしています。(1)サル痘の感染が疑われる発疹や皮膚の水膨れがある人との性行為やキスなど密接な接触、食器やカップ、食べ物の共有を避ける(2)感染者が使用した寝具やタオル、衣服に触れたり、共有したりしない(3)石鹸を使用したこまめな手洗いと手指のアルコール消毒(4)中央アフリカ、西アフリカを訪れる人はサル痘ウイルスを媒介する可能性のあるげっ歯類や霊長類の動物との接触を避ける。また、感染が分かった人は自己隔離し、同居する家族やペットがいる場合はできる限り同じ部屋で過ごさないことも感染を防ぐには有効だといいます。


■治療法とワクチン

現在、サル痘ウイルスによる感染症に対して使用可能な治療薬や治療法はありません。一方、症状を和らげる目的で抗ウイルス剤などが投与されることがあります。多くの場合は軽症で、発症から2~4週間ほどで自然治癒するといいますが、小児や健康状態の悪い人など一部で肺炎や敗血症などの合併症を引き起こす可能性もあるとされています。

現在、サル痘に特化したワクチンはありませんが、天然痘のワクチンが重症化を防ぐには有効であるとされています。LA郡保健当局によると、感染後に発症を防ぐためにワクチンの投与が行われることもあるとしています。


■コロナとのダブル感染の可能性は?

2つのウイルスは感染経路も性質も異なるため、同時に感染する可能性は極めて低いとされています。スタンフォード大学の感染症専門医によると、ダブル感染するのは「信じられないほど不運なこと」だといいますが、あり得ないことではないとしており、こまめな手洗いは重要な予防策となりそうです。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)