朝起きてから考える-青春18きっぷには、こんな楽しみもあります。早く目が覚めたら決行。そうでなければ再びおやすみ、前日にこんなことを考え、たまたま早起きできたので、行き先も考えず、時刻表も持たず手ぶらで家を出る。お盆休み終盤の週末、こんな「ケセラセラ」のミニ旅を行った。時刻表とにらめっこしながらの旅も18きっぷの醍醐味(だいごみ)だが、こんな使い方もいいものですよ。
パッと目が覚めたら6時過ぎだったので「じゃあ出るか」と家を出る。どこに行くのかも全く決めていない。歩いているうちに何となく新快速に乗ることを決めたのでカフェでモーニングを食べながら考える。
時刻表がないので、それなりに本数があるところがいい。暑そうなので面倒になって「早めに帰ろう」となるかもしれない(笑い)。1万1850円で5回使用できる18きっぷ、単純に考えると1日2370円分。往復だけで元をとれるところは湖西線かな。元気なら琵琶湖一周をしよう。
座りたいので尼崎から乗車し、近江今津を目指す。湖西線に直通する新快速は1時間に1本しかないが、気にせずに来た電車に乗ると、京都での乗り換えが新快速の先輩である117系〈写真1〉で結構喜び、大津京で後からやって来た新快速に乗り換え近江今津へ〈写真2〉。
廃線となった江若(こうじゃく)鉄道で唯一残る近江今津駅跡がある。「江若」とは近江と若狹のことで、大津から小浜までを結ぶ予定だった路線だ。峠越えが厳しく線路は近江今津までしか来なかったが、近江今津と小浜を結ぶバスは今も多くの本数がある。
駅構内の観光案内所で地図も合わせて親切に教えてくれたことで猛暑の中、徒歩7、8分で到着〈写真3〉。建物はきれいに保存されているが、中に入れない。小さな案内が残っているだけで、地図がないと通り過ぎたかもしれず、観光案内所の方には本当に感謝です〈写真4〉。
その隣のJRの旧社宅〈写真5〉に目を奪われる。おそらく元は国鉄の社宅だったのではないだろうか。事前知識が全くなかったのでくぎ付けとなってしまった。多くの職員、社員が働いていた証しなんだろう。
湖西線と北陸本線の接続駅である近江塩津駅〈写真6〉で北陸本線に乗り換えて南下し、久しぶりに訪れたのは田村駅〈写真7〉。北陸本線が電化された際、米原~田村の2駅分だけが非電化で長距離列車は、ここで蒸気機関車やディーゼル機関車の付け替え作業をしていた。また米原までの電化後も交流と直流の切り替え駅となったため、同様の作業が行われていた。構内には今も面影が残っており〈写真8、9〉、駅そのものが鉄道遺産だ。その後は彦根駅〈写真10、11〉で昼間からビールを飲み〈写真12〉、安土駅の新駅舎〈写真13、14〉を見ながら帰還した。
私の例は、あまりにもマニアに偏っていて、長浜をはじめ、彦根城、安土城跡など、いわゆる観光地はパスしてしまったが、旅といえば観光やグルメ旅が本筋だ。8月8日の原稿でも書いたが18きっぷはグループ旅もできる。
東京や大阪などの大都市近郊区間(※)は、100キロ以上の切符を所持していても途中下車ができないので18きっぷの利用は、ある意味おすすめかもしれない。このような区間には各社が1日パスを発売しているが、購入が前日までに限られたり、エリアや利用日が制限されたりと制約が多い。
ちなみに今回の道程で普通に料金を払って乗ったとすると軽く5000円を超えている。18きっぷの利用期限まで、まだ少しある。目指す場所は1時間にどのぐらいの列車が走っているかを何となく把握していれば大丈夫〈写真15〉。ぶらり旅や近郊旅をぜひお試しください。【高木茂久】
(※)東京、大阪、仙台、新潟、福岡に設定されている。乗車駅から目的駅まで複数の経路がある場合、乗客は、どの経路を選択しても料金が同じとなる規定。必然的に最短距離での料金となる。東京~有楽町は山手線で1駅だが逆回りをしても料金は同じで、この規定を利用した「大回り乗車」を楽しむ鉄道ファンも多いが改札外に出ることはできない。