東金線は外房線の大網と総武本線の成東を結ぶ。地図だけを見ると総武本線の延長のようにも見えるが独立した路線。ただし総距離は約14キロと短く、単独の途中駅はわずか3駅。全線単線である。都心からそう遠くないにもかかわらず未乗だった路線に初訪問となった。(3月27日訪問)


今回利用したのは「休日おでかけパス」(写真1)。首都圏の近郊エリアのJRが乗り放題となる。まだ青春18きっぷの季節で、この時点で2回分残していた。次週は福塩線乗車の予定だったが、検討の結果、1回分しか利用しないことになったため、その分をこちらに充当しようと考えたが直前で方針変更した。

〈1〉休日おでかけパスは当日の購入も可能
〈1〉休日おでかけパスは当日の購入も可能

18きっぷの1回分は2410円。2720円のおでかけパスが若干高いが、モノレールに乗れるのがポイント。今回は飛行機で帰阪することになっていたためモノレールの料金を考慮するとおでかけパスが安い。また首都圏で電車に乗ったり降りたりする場合、自動改札を利用できない18きっぷというのは、かなりのストレスになる。

〈2〉大網駅は高架駅
〈2〉大網駅は高架駅
〈3〉大網の駅名標
〈3〉大網の駅名標

都心から千葉を目指す。まずは大網へ。数少ない総武線からの外房線直通に乗れた。東金線の起点でもある大網はユニークな構造。外房線のスイッチバックを解消するために駅を移動した結果、東金線と外房線のホームが大きく離れている。それでも歴史を感じる文字案件(※)をいくつか目撃した。てくてく歩いて東金線に乗車する。(写真2~7)

〈4〉ホームの柱に残るホーロー案内の文字は明らかに「案件」である
〈4〉ホームの柱に残るホーロー案内の文字は明らかに「案件」である
〈5〉のりかえ案内の文字も古いままだ
〈5〉のりかえ案内の文字も古いままだ

東金線の歴史は古く、明治期には全線が開通している。現在の外房線の大網まで、同じく総武本線の成東駅もすでにできていたので、両者を結ぶ路線として敷設された。ただし総武本線と外房線が幹線であるのに対し東金線は地方交通線で全線が単線。昼間は1時間に1本と、のんびりしたローカル線ムードが漂う。ただ単独駅は3駅しかない上、前週は姫新線の津山~新見間に乗り、翌週は福塩線の府中~塩町間を訪れることを考えると1時間に1本なんて頻発ダイヤだ。

〈6〉東金線ホームが離れていることを示す案内図
〈6〉東金線ホームが離れていることを示す案内図
〈7〉東金線ホームから外房線ホーム(左)を望む
〈7〉東金線ホームから外房線ホーム(左)を望む

いつもの通り行って戻ってで3駅を巡る。まず訪れたのは、ある意味、長年の「答え合わせ」が待つ最も楽しみな求名である。難読駅というのは鉄道ファンのみならずベストセラー的なクイズだと思うが、昔は本当に大変だった。今は手元にスマホさえあれば簡単に答えが出てくるが、ネットのない時代は分からないものは分からないままだった。現地付近に知人がいなければ鉄道会社に電話するか訪問しかないのである。

求名は難読駅クイズの常連さんだ。ただ私はこの日まで答えを知らずにいた。到達難易度の高い駅でもなく、千葉県の貴重な未乗車区間だけに、あえて、いつか来るこの日を待っていた。そして結果はこちら(写真8)。全く想像すらできない駅名だった。だからこその難読駅だが「ぐ」とは、なかなか読めない。

〈8〉求名の答えはこちらだった
〈8〉求名の答えはこちらだった
〈9〉求名の駅舎
〈9〉求名の駅舎
〈10〉跨線橋を降りるとホームに窓口と券売機がある
〈10〉跨線橋を降りるとホームに窓口と券売機がある

ただ読みも含めて、なかなかユニークな駅構造である。ロッジ風の駅舎があるが、実質的な機能は待合室。駅舎を抜け跨(こ)線橋を上り下りした島式ホームにきっぷ売り場とICリーダー。改札はない。1度は無人化されたが、城西国際大学の東金キャンパスができて利用客が増えたため、再有人化された際、こちらに窓口を設けたため、このような構造になったという(写真9、10)。

〈11〉駅舎や改札はなく、そのままホームに入る構造となっている
〈11〉駅舎や改札はなく、そのままホームに入る構造となっている
〈12〉枕木を再利用した柵と年季の入った駅名標
〈12〉枕木を再利用した柵と年季の入った駅名標

次いで再び東金を飛ばして福俵へ。こちらは1面1線駅舎もなくホームのみの「ザ・ローカル線駅」だ。それでもホームを降りると枕木を再利用した柵と最新の待合所が混在。アップデートが行われているのが分かる(写真11~13)。東金線では1日1往復だけだが東京への直通電車が運行されており、70分前後で結ばれていることもうなずける。さて途中駅3駅のうち2駅を巡った。いよいよメインディッシュの東金駅に向かおう。【高木茂久】

〈13〉待合所付近はピカピカの最新
〈13〉待合所付近はピカピカの最新

※駅によっては国鉄時代からの古い文字が残されており、それを鉄道ファンは文字案件と呼ぶ。