水口シリーズの完全制覇を目指す-。米原と貴生川を結ぶ近江鉄道本線。2年前にも取り上げたが、今回はその時に細かく回れなかった八日市より西側を訪問した。近江鉄道の終点でJR草津線、信楽高原鐵道との接続駅である貴生川から乗車。まずは4駅連続で「水口」が続く各駅訪問である。(訪問は9月13日)
東海道本線の草津から草津線に乗り換えて25分。貴生川に到着した(写真1)。ここから近江鉄道に再度乗り換え。信楽高原鐵道は、かつてJR(国鉄)だったためJRと同改札だが、近江鉄道は別の改札である(貨物利用もあったため、かつてはつながっていた)。
さっそく近江鉄道のホームに向かうが、何度も見てきた乗り換え案内。あらためて見ると、くっつきすぎの感があって、ちょっと笑ってしまった。矢印の先は文字案件的な古いものだが、後から設置した際、このスペースしかなかったのだろう。(写真2、3)
待ってくれていたのは元西武の近江鉄道800系のひとつ。20年近くダイドードリンコの広告が施されている。個人的な話となるが、約40年前の学生時代は西武を利用していたため、近江鉄道に乗るたびに懐かしさを感じてしまう。(写真4、5)
今回の目的は貴生川から八日市にかけて、じっくり回ること。近江鉄道については2019年10月17、24日の記事でも記したが、京セラ前より西側については、ほとんど紹介できなかった。ゆっくり回ることにしよう。私が勝手に名前をつけた「水口シリーズ」。貴生川を出ると「水口城南」「水口石橋」「水口」「水口松尾」と4駅も続く。駅でシリーズといえば北海道の石北本線「白滝シリーズ」が有名である。本欄でも紹介した(2019年6月21日)。かつては5つもあった駅が、今はひとつしか残っていないのだが、そちらに比べると距離も運行本数も全く異なる。何より難易度が違う。なぜなら、ひとつ目の水口城南から、ほぼ徒歩で移動可能だからである(笑)。
最初に降りた水口城南はまるで一軒家のようなコンクリート駅舎。市役所や警察署、裁判所などの最寄りで甲賀市の中心駅。シリーズ4駅で利用者が最も多い(写真6~8)。ということで、お次の水口石橋まで歩く。貴生川と水口城南は川を渡るため、それなりの距離があるが(とはいえ30分ほどで歩けるはずだ)、水口城南~水口石橋は線路でたったの700メートル。必ずしもレールに沿って道路があるわけではないので実際はもう少し歩くわけだが、しんどい距離ではない。
地図アプリなどは見ずに進む。住宅街を進むのだから何とかなるだろう。公園を横切り水口神社の参道と思われる道を行くと、かわいい忍者の飛び出し注意に遭遇。さすが甲賀市。ちなみに読みは「こうか」である。かなりの確率で「こうが」と読まれているが、それは誤り。伊賀(いが)と甲賀を並べる際に濁音がついてしまったのかもしれない。(写真9)
水口石橋は「ザ・駅」のコンクリート駅舎。こちらは古くからの住宅地のようで駅の近くにあったのは有名な水口曳山祭で使用される曳山を収納する「山蔵」のようである。今度は水口まで600メートル。当然歩く。近いこともあるが、昼間は運行が1時間に1本というのが徒歩の最大の理由だ。(写真10~12)
メインイベントの水口に到着。素晴らしい木造駅舎が出迎えてくれた。駅が開業した明治以来のものだと推察される。2面構造で行き違いが可能。使いこなされたラッチ(改札)だけでも見る価値は十分。実は明治の開業時の電化もされていないころ、貴生川の次の駅は、ここ水口だった。ただ駅の位置は街はずれにあったため、利便性を増すために戦後、他の「水口駅」が設置された。まず1957年に水口石橋が開業。水口城南と水口松尾に至っては平成に入ってから。水口石橋と水口松尾の駅舎の違いは歴史の長さで、カーブ状の場所にホームが設置されたのは戦後の技術によるものでもある。(写真13~17)
シリーズ最後の水口松尾は国道沿いにポツンとあるホームと待合室のみの駅。ここまで来ると農地も目立ってきて、さらに街はずれ間が強くなる。駅の少し手前でコンビニに遭遇。まだ暑い季節だったので貴重な休憩所となった。近江鉄道では平日の昼間と週末にサイクルトレインとして車内に自転車を持ち込める区間を設けている。ちょうど自転車で乗り付けた人がいた。ここから先、次の日野へはちょっと徒歩が困難な区間。というより、ちょうど電車がやって来た。乗り鉄というより歩き鉄となってしまったが、充足感を持って電車に乗り込んだ。【高木茂久】(写真18~20)