苦手な釣りで栄冠を引き寄せた。「2016日刊スポーツ・フィッシング・サーキット」アユ釣り大会が18日、静岡・興津川で開催された。台風16号が接近する中、不安定な空模様でも72人が参加した。雨交じりの決勝戦では、昨年3位の金沢辰巳さん(51=大月市)がトロ場で活路を見いだして13匹を記録し、連覇を狙った都留高校の先輩、野崎洋美さん(56=上野原市)を2匹差で突き放した。10匹の梅村強さん(56=岡崎市)が3位だった。

 豪雨で興津川が白煙をあげた。下流域では水田からの流れ込みで、茶色い流れに支配されてしまった。競技委員長の横山愛治さん(68)は「それでも魚はいる。こういう状況でも釣る人はちゃんとアユを持って帰ってくるさ」と話した。

 昨年3位の金沢さんは、予選免除のシード選手。決勝に合わせて午前10時ごろ、ゆっくり会場入りした。

 金沢さん はやる気持ちを押さえて、大月の自宅を朝6時半ごろ出ました。予選をやって決勝の方が気持ちを持っていける。シードは苦手なんですよ。

 大網のつり橋から予選の様子を見た。橋周辺には誰もいない。石を見たがアユの気配は感じなかった。場所を移動してつり橋のたもとの護岸からチラリとトロ場を見るとギランとアユが反転するのを何度も見かけた。打ちつける雨で、真上からは見えないアユを目視できたのだ。

 クジ運から見放された。25人中19番目。この大雨で特別ルールとなり、エリア内ならどこでもサオが出せることになった。下流域の濁り情報に選手のほとんどが上流を目指した。

 金沢さん つり橋周辺は誰もいない。トロ場の“ギラン”もあったので、もうここでいいや、と。ただ、瀬の方が好きで、トロ場は嫌いなんですよ。

 入って最初は、やはり得意の瀬を攻めた。しかし、バラしが1回だけで30分何も釣れなかった。しかたなくトロ場でオトリを泳がすと、次々に掛かった。

 一方、野崎さんは昨年優勝を決めた最下流の和田島橋まで30分歩いた。実釣時間は1時間ほど。それでも和田島橋にこだわった。

 野崎さん 興津川は荒れに強い。最初、上流を目指したんですが、誰も下流にいかないので、きびすを返した。決勝では小雨になっていたので、和田島橋周辺はササ濁り程度。勢いのいい瀬を攻めたら、面白いように掛かった。

 金沢さんと野崎さんは、山梨・都留高校卒業で、野崎さんが5年先輩になる。5年前のアユの大会で雑談から判明した。

 野崎さん 金沢さんは後輩だけど、瀬に入ったら本当にスゴいよね。その金沢さんがトロ場か。スゴいね。

 梅村さんも金沢さんをマークして、すぐ上流で釣っていた。ガンガン瀬にオトリを入れて、4匹連続でキャッチした。野崎さんが釣れていないことを確認して安心した。

 梅村さん そうしたら30分後に金沢さんが、入れ掛かってる。そのまま、私も下がりながら様子をみたらなんとトロ場。マネしたけど釣れない。で、思い切って最初の瀬に戻って釣れたけど、時遅しでした。

 梅村さんは2011年から3位→3位→2位→3位→4位ときて、今年3位。

 梅村さん 来年こそ優勝したい。打倒金沢です。

 狙われる立場の金沢さんは「いやいや、昨年3位だし、次は準優勝で」と周囲を笑わせた。【寺沢卓】