東京湾のシロギスが戻ってきた。釣りビギナーの入門編として長年愛されているキス。特に東京湾では「キスで釣りを始めた」という釣り人がけっこういる。最近では、その座をアジに奪われて影が薄くなってきていた。いよいよ7月下旬から中ノ瀬や富津沖でキスの声を聞くようになってきた。どの程度の回復具合なのか、実釣してきた。

 東京湾にシロギスが戻ってきた。いや、正確に書くならば「そこにいたけれど、釣りにくかった」というのが適当かもしれない。

 7月中旬から少しずつ釣果が伸びてきたこともあって、まず7月25日、川崎「つり幸」に出向いた。常連さんに聞くと、こう返ってきた。

 「食いは良くなかった。でも、問題はアカクラゲの大量発生。底からちょっと浮いたあたりに漂っていた。キスを掛けても、巻き上げるときにアカクラゲもしょってしまう。アカクラゲの重さで掛かったキスが抜ける。7月中旬からアカクラゲが少なくなって、今はほぼいない。最初からキスはいたんだよ」。

 なるほど。アカクラゲは春先に多く発生する。今年は猛毒のカツオノエボシまで出てきた。この猛暑でクラゲも耐えられなかったのか、今は魚に絡んでくる赤い細いヒモ(アカクラゲ)は見られなくなっていた。

 この日は富津沖を攻めた。千葉県だが、川崎から船で移動すれば約40分。アクアラインの最深部の通気口「風の塔」やパーキングエリア「うみほたる」など海上の名所を眺めているだけで釣り場に到着する。意外に近いので驚いてしまう。

 富津沖は水深13~15メートル。浅い砂地なので、初心者やビギナー、釣りに慣れていない家族連れ、カップルにも無理なく楽しんでもらえそうだ。仕掛けは、2種類ある。オモリを下に付ける胴付きタイプと、仕掛けを潮で流す片天ビンタイプ。初めてならばそのまま落として底の感触をはっきり察知できる胴付きタイプの方が操作しやすいだろう。

 ちょい投げしなくても真下に落としてアタリが取れる。これなら胴付き仕掛けでもある程度は釣れそうだ。富津沖では、キスのサイズがそこそこ大きい。同乗した海洋環境専門家の木村尚(たかし)さんは「20センチぐらいのシロギスが釣れる。キスは群れで底付近を回遊している。誰かが釣れればチャンスはある。その代わり、ちゃんと底にオモリをつけてくださいね」とアドバイスしてくれた。

 2日後の27日には、1年を通してキス&アジにこだわって出漁する山下橋「広島屋」。東京湾・キス釣りの聖地・中ノ瀬に出張った。中ノ瀬は南北に約11キロ、東京湾の中にドデンと構える海中島だ。海流が中ノ瀬の際に当たるとプランクトンがわいてくる。小魚の楽園だ。ここもアカクラゲが多かったが、今ではその邪魔者はいない。

 多少流れは速いが、真下に落とすサオが1本、そして投げ用のサオも1本。大谷翔平ではないが二刀流で挑んでも面白い。タコボウズ記者もサオ2本を試してみたが、これが忙しい。まず、足元に落とす。ヒョイン、と2本目を投げると、置きザオの先端がプルルンと上下動する。仕掛けを投げたサオを置いて、震えるサオを巻きあげると20センチ近いキス。そして、放っておいたサオに目をやると、やはりプルルン。忙しい。

 結果、午前便のつり幸では24匹、午後1時半まで釣りをする広島屋では43匹。取材をしながらなので、まずまずの釣果だ。夏休み、これからでもまだ間に合う、東京湾のシロギス、忘れないでくださいね。【寺沢卓】

 ▼川崎「つり幸」【電話】044・266・3189。午前キス同6時50分出船、エサ、氷、仕掛け1組付き6500円(午後便あり)。別船でタチウオ、(午前午後)LTアジ、スルメイカ(予約制)、週末限定の夜メバル&カサゴ。JR川崎横のヨドバシカメラ前待ち合わせの送迎バスあり。要予約。

 ▼山下橋「広島屋」【電話】045・622・8615。ショートシロギスは午前7時30分出船、エサ付き7500円。氷200円、仕掛けは250円~。ほかにLTアジ、週末限定の夜メバル&カサゴ。要予約。みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩5分。