伊豆半島の温泉地を巡りながら、体に優しい「かかりつけ湯めし」をいただいて、ついでにエギングのアオリイカ釣行を楽しんだ。11~14日に3泊4日でぐるんと回ってきた。サオを振ったのは「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ系)に出演する海洋環境専門家の木村尚(たかし)さん(62)と、温泉ライター板倉あつしさん(58)がコンビを組んだ。

◆熱海

今年はアオリイカが好調だ。そこで伊豆半島をぐるんとエギング周遊して、ついでに温泉につかって、うまいものを食べよう、というツアーを11日から14日まで組んだ。木村さんがサオを振り、温泉と食は板倉さんが担当した。

まず、熱海からスタート。本港で狙っていた瀧俊介さんは「10日夜に雨が降って乗りが悪くなった。9日から来てるんですがいい反応だった。ここのアオリは回遊型だから、夜とか昼とか関係なく根気強く投げていれば当たりよ」。翌朝挑戦することにした。

明けて12日、本港の公園にいた佐々木翔さん(32)は秦野市から毎週のように通っていて「5回きて1回の割合」でアオリイカをゲットできると話した。この日は第1投で400グラム前後を抜き取った。「底までエギを落として抱かせる感じですね」とヒントをくれた。

昼すぎに板倉さんと合流。温泉につかっていれば大病を防げるという「かかりつけ湯」を推進している。伊豆半島を中心に46カ所が加盟していて、板倉さんはその温泉に合った「かかりつけ湯めし」も探し回っている。熱海では創業89年の山木旅館。源泉が熱めでポカポカするお湯だ。

食事はマグロの薄切りをご飯に乗せて、かつお節と昆布でとったダシにゆずこしょうを隠し味で含ませた「まご茶」。山木旅館の先代おかみが引退して約10年前に開いた「まご茶亭」を開業して提供し、今は孫の鈴木吉矢さん(25)が切り盛りする。これも温まる。

◆稲取~湯ケ島

熱海では釣りのヒントをもらい、稲取温泉に移動した。ここは夜釣りで、宿泊する「まえだ苑」の孫娘桃花ちゃん(16)と同級生でアオリ名人の中村洋介君(17)に教わった。中村君は「しばらく待って落とす。それでサオをあおって掛ける」との攻略法。基本はどこでも同じだ。ただ、やや肌寒く、この日は退散して、まえだ苑で自慢のキンメダイの煮付けとしゃぶしゃぶをいただき、最後には煮付けとしゃぶしゃぶの汁をご飯に掛けるだけ。これが甘いけど濃くて、体の疲れを癒やしてくれた。

13日は伊豆半島のど真ん中、船原~湯ケ島を経由して松崎町に出た。

海がないのでアオリ狙いは封印。船原では「船原館」に入った。湯量が豊富で柔らかな肌触りだ。湯上がりには、天城峠が近いこともあってすり下ろしをそのまま白飯にのせる「ワサビめし」。シイタケ石づきのつくだ煮とワサビの茎の酢漬け、削りたてのかつお節をトッピングして食べる。「これ、辛くない。シイタケのつくだ煮がいい仕事してる」と木村さん。

湯ケ島「たつた」の「ふくの湯」は「加温加水ろ過 不要」と強気のただし書き、100%源泉掛け流しのまったりしたお湯だ。入浴後は川のせせらぎを聞きながら外気の中、こたつに入って「ワサビ鍋雑炊」。山盛りのワサビを入れるけれど、火にかけると辛みが飛んでうま味だけが残る。ベースはシャモ鍋。卵でとじて、食べる直前にさらに擦ったワサビを絡めるとうまさが増幅される。板倉さんは「胃袋がすっきり。川の流れる音色を耳にして気持ちも落ち着くね」と肌もつるつるすべすべだ。

◆松崎町

西伊豆の松崎町に到着するころには暗くなっていて、しかも雨。釣りは断念。地元民との会食で情報収集すると、宿泊地「伊豆まつざき荘」から徒歩10分の松崎新港がいいようだ。

翌14日朝、雨はあがっていて絶好のアオリ日和。準備をして3投目、午前6時ちょい前、記者のエギが重くなった。海面で「ブシュー」とアオリの潮吹きの音が聞こえた。カワイイ大きさ。オレンジのエギに抱きついて、触手2本だけでなんとかキャッチできた。

木村さんは「潮がきれいだね。いい海だ。ただ、海藻が少ない。イカの産卵場や小魚の隠れる場所がない。今からでも遅くないから海藻の茂るエリアをつくると劇的に変わるかも」と提案した。釣り帰りは午前6時半に開店する「さつまあげのはやま」に立ち寄って揚げたてをパクリ。木村さんは「これはビールがほしいや」と胃袋が刺激されたようだった。【寺沢卓】