正確な振り込みが尺半に通ず。6月2日、群馬・神流湖(かんなこ)で「日刊スポーツヘラブナグランドチャンピオン大会(グラチャン)2019」予選会が実施される。今月上旬には定員が埋まる大人気。そこで、ヘラブナ道場の関川康夫師範代が「こりゃ、大きなヘラを狙ってみるか」と上流域でサオを出した。見事、44・6センチを釣り上げました。

      ◇       ◇

尺半。1尺が約30センチなので45センチのことをこう呼ぶ。サオの長さでいまだに「尺」表記を使うヘラブナ釣りで、キャッチした魚の大型とは尺半からになる。

関川師範代 正直ね、40センチも大きいよ。でも、どうせ狙うなら尺半だね。神流湖にもいるんだよ。

そう瞳をギランギランさせながら師範代は声に力を込めた。そう、尺半を釣り上げようか。

取材日は今月23日。その2日前が台風のような大雨だった。上流域の湖水は濁っていた。ガイドを引き受けてくれた秋山文宏さんは「中流域はクリアで5メートル下ぐらいまで見えるけど、この濁りならヘラもこっちが見えないからいい勝負になる。多分、釣れますよ」とにこやかな表情。尺半、いけそうだ。

使うエサはマルキユーから新しく出た「グルテンダンゴ」。グルテンが入っているから経験の少ないビギナーでも簡単に作れて、まとまる。ばらけエサ(ヘラを集魚する役割で上バリにつける)も、食わせエサ(ばらけで集まったヘラを食わせる。下バリにつける)も同じように小粒につける。

師範代 とにかくね。小物ばかり。ヤマベが多いね。この外道を総称して「ジャミ」と呼ぶ。これは仕方ない。このジャミの外側で大きいヘラが機会をうかがっている。ふわふわしたアタリはジャミ、ウキが鋭く入る本命まで我慢できないと尺半はとれない。

やはり、ジャミの猛攻が2時間ほど続いた。だが、ウキが何も動かなくなる瞬間がある。大型のヘラが動くとジャミが散っていく。

師範代 ウキが静かになったら集中してください。そこ、大チャンスですから。

師範代のウキが突然鋭く沈んだ。目盛り7つぐらい。シュボッ! 素早くサオを握る右手を振り上げると、15尺(約4・5メートル)のサオがギリギリうなりながら満月状にしなった。引き寄せると湖面が小さく割れて波の塊の中に大きなヘラがもんどりうって師範代に引き寄せられていく。これが管理釣り場では体験できない天然のヘラのパワーだ。44・6センチだった。

師範代 あと4ミリだったね。ほぼ尺半だ。ジャミの猛攻の2時間はツラくて長い。でも、その間、精密機械のように同じポイントに正確に振り込んでいく。その場所には自分のエサで作った細い柱ができている、というイメージ。この正確な振り込みの積み重ねこそ、尺半への近道なんです。

2日には神流湖「山水」の予選会が行われる。正確無比な振り込みに集中してみてください。おのずと結果がついてきますよ。【構成・写真 寺沢卓】