新型コロナウイルスの感染防止のため、自宅で過ごす日々が続く今日この頃。竿を出したくてうずうずしている釣り人が多いのでは。こんな時こそ、新しい釣りへのチャレンジに備え知識を蓄えてみてはいかがでしょうか。というわけで夏の代表格・アユの友釣りをレクチャーしたいと思います。初回は友釣りの魅力、面白さ、アユの種類、シーズン別のポイント解説です。これからアユ釣りを始めようと思っているビギナーは必見ですよ。次回は、アユ釣りの道具について解説します。

アユの友釣りの魅力はなんといっても、アタリ、引きの強さ。小さな魚体からは想像できないほどのスピードとパワーが釣り人を魅力する。目印が一瞬で引ったくられ、手元まで響く強烈なアタリはほかの釣りにはなかなかない。30センチ近い大アユともなれば、川の中をひきずり回されるスリル満点のやりとりが味わえる。

この力強さは野アユの生存競争を利用した友釣りならではのファイトといえる。アユはコケを食べる一定のエリアを縄張りとして持ち、そこへオトリアユが侵入してくると猛烈なアタックで排除しようとする。そのときにオトリアユの掛けバリが天然アユに刺さり、興奮状態で川を走り回り豪快な引きを楽しませてくれる。

そんな縄張りアユを釣るためには、ポイントの見極めが大事。初夏から晩秋へ野アユが成長するにつれ、縄張りを持つポイントが変わっていく。それを経験値で探し当てるのもアユ釣りのだいご味だ。自分がここぞと思った石で追わせたときの達成感は半端ない。なんとなく掛かったのではなく、縄張りポイントを見つけだして掛けるところが面白い。

また、川は水位や水温、川底が毎年、変わり、いろんな顔をみせる。それに合わせてアユの成育具合、そ上エリアも変化する。そんな中、ホーム河川に通ってデータを積み重ね、年々のヒットパターンを探していくのも、アユ釣りに引き込まれる大きな要因だ。川の色の変化が見えてくると、アユも見えてくる。

このようにアユ釣りは年数を重ねていくことで腕が上がり、面白さが増す。若い人は瀬に立ち込み、ダイナミックな釣りを楽しむのもよし、年配者なら、長年の経験で足場のいい好ポイントを見極め、のんびりと竿を出すのもアユ釣り。地元なら、90歳になっても続けている人がいるほど、長年にわたって楽しめる。

アユの友釣りは、費用がかかるイメージがあって尻込みする人も多いが、道具をそろえてしまえば、年券と釣行時のオトリ代だけ。それで、初夏から晩秋までどっぷりと友釣りを楽しめるのなら、お安いかもしれませんよ。【近江康輔】

<アユの種類>

▼人工産アユ=海や湖で取った天然アユの稚魚を畜養し、それを元に人工授精させたものを人工産という。交配を重ねるごとにF1、F2、F3、掛け戻しなどと呼ばれていく。

▼天然アユ=湖や海から自然のまま、そ上するものを天然そ上アユと呼ぶ。また、12月ごろにびわ湖で稚魚を捕獲し、大きくしたものを湖産と呼び、2月ごろに海で稚魚をとり、淡水化し、育てたものを海産(中間育成)と呼ぶ。

<時期別のポイント>

アユは成長の過程で縄張りを持つポイントが変わっていく。初期は体が出来ていないため、一番強い流れよりもアユが休みやすい弱い流れに縄張りを持つ。水当たりはいいが、流速が少し落ちる瀬肩や、大石の段々瀬がポイントになる。この時期は海産よりも生まれるのが3カ月ほど早く、体が出来上がりつつある湖産がメーンターゲットになる。

アユが成長する梅雨明けからは、海産も縄張りを持ちだし、瀬の中で流速が上がる流芯で掛かりだす。そして、水温がぐんと上がる真夏は川底に段差があるところが狙い目。段の下は伏流水がわき出ていることが多く、水温が低くてアユがたまりやすいからだ。

また、朝に瀬にいたアユが、昼間の高水温時に淵の深場に身を潜め、水温が下がる夕方になって再び、コケを食べに瀬へ上がっていく様子を「朝瀬、昼トロ、夕上り」という。

その後は、どんどん海産アユが成長し、お盆をすぎると湖産が産卵を意識し始めるため、海産主体のハイシーズンを迎える。このころになると、完全に体が出来上がった海産アユが多くなるため、大きな石だけではなく、小さな玉石がある川底の形状変化にも縄張りを持ち始める。

そして彼岸のころに海産アユが再び瀬に戻り、その後は淵に入って産卵の準備を始める。このように友釣りはアユの成長、季節の移り変わりに応じて釣りを組み立てていくところが他の釣りとは異なる面白さ。最後は抱卵アユが産卵場を探しながら下っていき、一生を終える。