ニホンオオカミは絶滅してしまったけど、海にはまだ“オオカミ”いるんです。千葉・南房の相浜「松丸」では、高級魚で知られるシマアジを狙う乗合船を出している。外房ではイサキ釣りに顔を出すけれど、相浜ではマダイ釣りで強烈な引きを堪能できる。3~4キロだけではなく5キロ超の別名オオカミも夢ではないぞ!

まだ、薄暗い相浜港から出船する。午前4時ぐらいから釣り人がポツポツと集まってきて、同4時30分を過ぎたぐらいには港を離れていく。狙いは幻の“オオカミ”だ。

「松丸」西藤裕(さいとう・ゆたか)船長(60)は「シマアジのでっけぇのをオオカミと呼んでますね。5キロ以上ぐらいならオオカミかな。10キロというのも釣れたこともあるんですよ。ヤツらは群れで突然来る。いつくるか、それはわかんねえけど、常に心の準備はしているといい」と、オオカミを釣る心得を教えてくれた。ちょっと緊張感が漂ってきた。

海洋環境専門家の木村尚(たかし)さん(63)も、この松丸でオオカミを追いかけている1人だ。ちょっとした夢があって「もし釣れたら、バチが当たるかもしれないけど、アジフライにしてみたい」。出演するテレビ番組で念願がかない、シマアジのフライを食した。「とってもおいしかった。ただ、私はまだ自分でシマアジを仕留めていない。自分で釣ったシマアジでフライを食ってみたい」。

魚を釣る。そして食べる。とても単純な野望なのだが、相手はシマアジだ。果たしてうまくいくのか。

仕掛けは、ほぼマダイと一緒だ。ただし、相浜沖はタナ(魚の泳層、この釣りの場合、コマセカゴ80号の海面からの深さを差す)が浅いため、ハリスは全長でも6メートル前後(クッションゴム1メートル)。従来のマダイ釣りのように10メートルの長さは必要ない。サオもマダイ専用調子の「5・5」ではなく「6・4」調子ぐらいの多少張りのあるものの方がいいかもしれない。当然、魚に走られてもいいようにリールのドラグは緩め設定が望ましい。

シマアジもアジなので、コマセを切らすことなく振って、寄せることが重要だ。もちろんマダイも釣れるがコマセにすぐ反応するワラサやショッコ(カンパチの幼体)、ヒラマサなどの青物も釣れる。底に近い層を狙うとハタ類も掛かってくる。最終目標はシマアジながら、高級魚五目の様相を呈している。よだれが出てきそうだ。

気を持たせずに結果を明かすと、シマアジは釣れなかった。タコボウズ記者(寺沢です)のサオがギュン、としなって、キューと道糸が15メートルほど走った。慎重に巻いて残り6メートルでフッと軽くなった。西藤船長は「それ、本命だったな。口切れしたかも。惜しいなぁ」とボソリ。釣れなかった魚なので仕方ないのだが…あと6メートル。うう、悔しい。

2キロ前後のマダイと約3キロのワラサは釣り上げることはできた。でも、オオカミらしき魚を逃してしまった。これはこれで楽しい。船中では6キロのマダイを筆頭にワラサ、アカハタとそれなりの釣果は残せた。

木村さんはマダイは釣れたが肝心のシマアジは課題として次回以降の釣行に持ち越しとなり「また、マダイだけかぁ…シマアジが釣れたら、晴れて撮影もしてもらいたい」と釣れるまでチャレンジする姿勢を見せ、背筋を伸ばした。

相浜沖では11月までシマアジは釣れるそうだ。これからが本番。オオカミ狩りに南房を目指してみませんか?  【寺沢卓】

▼ハリスは? 掛けるだけならば3号なら間違いない。ただ、すぐに口切れして逃げられてしまう。4号か5号がいいだろう。6号だとマダイやワラサに敬遠されてしまう。ハリはマダイバリの9号か10号で、フグをよける効果のあるツヤ消しの黒いタイプがいいようだ。

▼相浜「松丸」【電話】080・1154・5283。シマアジの乗合船は、12人限定とします。午前4時30分集合で、そろい次第出船。コマセ、氷付きで1万1000円。