最近、管理釣り場でヘラブナ釣りを楽しむ若者も増えているようだ。そこで、日刊釣りペン・クラブ関川康夫さん(69)に、埼玉・円良田湖の常管桟橋で、ヘラブナ釣りの基本をレクチャーしてもらった。「ヘラブナに挑戦してみたいが、何をしたらいいのか分からない」。今回はそんな方に向けた超入門編だが、今更聞けないあれこれも満載(?)。最低限押さえておきたい基本を紹介する。

今回訪れた円良田湖は、ビギナーからベテランまで楽しめる釣り場として名高い。

関川 ヘラ釣りには3つのパターンがある。1つは管理釣り場、2つはここや西湖、精進湖のような野釣り。そして型狙いの大物釣り。最近、自分は大物釣りに傾倒している。

釣り人か、魚か。主導権がどちらにあるかで、釣り方は変わってくる。

関川 円良田湖は魚の密度が濃く、タナに魚を集めて釣ることができるので、主導権は釣り人にあるといえる。逆に、密度が薄いと魚主体となり、魚がいるであろう場所に仕かけを落とす必要がある。

ヘラ釣りの1年についてはこうだ。

関川 「秋はタナを釣れ」という格言があって、気温が急激に下がると魚は深場に移動するし、気温が上がれば浮いてくる。その日の泳層を探るのが大変になるが、大型も見込める。冬は活性が下がるので、野釣りはシーズンオフ。3~5月ころが産卵期となり、浅場で釣れるいわゆる“ノッコミ”。梅雨時季は産卵を終えたヘラが一服し、7月ころから本格的に食い始めるので水通しの良い場所で楽しめる。

ヘラザオは短いもので6尺(約1・8メートル)、長いものでは30尺(約9メートル)にもなる。

関川 狙うタナによってサオの長さは変わる。リールがないので、サオの長さが仕掛けの長さになる。例えばタナが5メートルで10尺(約3メートル)では届かない。だからサオを何本も用意する必要がある。今日も8本持ってきた。

ヘラウキも多彩だ。

関川 ウキはセンサーで、アタリを取るだけでなく、餌残りの状態も分かります。選別はタナの深さが大前提だが、魚の活性が高いときほど大きなウキでオモリを重くし、タナまで早く餌を落とす必要がある。そうしないと、餌が魚にもまれてしまう。

針は2本針だ。

関川 針には魚を掛けることと餌を持たせる意味もある。まずは8号で、ハリスを40センチと55センチで探ってみましょう。

ヘラ釣りで最も重要な作業が「餌落ち目盛り」の設定だ。

関川 仕掛けをセットした状態で、ウキのトップの目盛りがボディーから2~3目盛り入った場所に設定するといい。根元に設定するとウキが弾むような動きをしてしまい、上過ぎると餌がついたら沈むので、アタリが取れない。また、表面張力で浮いてしまうため、必ず1回沈めてから設定するといい。

餌も重要だ。

関川 今回は、おふの練り餌4種類を配合。その日の状況によって調整するが、魚影が濃いときは食わせ主体である程度粘る状態、薄いときは魚を寄せる必要があるのでバラケやすくする。餌付けのポイントは必ず餌の真ん中からハリスが出るようにつけること。

以上の工程を経て、何投か打つと、やがてウキの周りに魚が集まってきた。ウキがビクビクと動くが、関川さんは合わせない。「あれは食っていない。ハリスか餌に当たっているだけ」。さらに打ち直した後に、ウキが一気に沈み込むと、ビシュッ! と合わせた。サオがしなり美しい弧を描く。上がったのは40センチと、いきなりの大物となった。「いい型だね。しばらく来ないうちに円良田湖のヘラが大きくなっているような気がする」。同湖ではリリースがルールとなっているため撮影後、即リリース。

「これだけ魚影が濃いと、いかに釣りたい層に魚を集め、掛けるかが釣果につながる。タナを作るのもテクニックです」。ハリスの長さを変え、餌の硬さを変え、さまざまな調整を施しながらタナを作り上げ、計20匹を上げたところで降雨終了となった。

関川 奥は深いけど決して難しい釣りではないので、ぜひ若い方に挑戦して欲しい。ヘラ界は高齢化しているので(笑い)。

ウキを見つめてノンビリ待つ。そんな勝手なイメージだったが、その実態に触れると大間違いだった。【川田和博】

■記者も初体験 ほめられヘラヘラ

関川さんのセッティングをそのまま借りて、人生初のヘラ釣りを体験した。「何があってもサオを離すなよ!」と関川さん。仕掛けが水中にあると、カラバリでも食うことがあり、サオを持っていかれることもあるためだ。実際にやってみて、最も難しかったのが餌付け。関川さんは右手でサオを持ち、ウキを確認しつつ、左手で餌の量や硬さを調整していた。見よう見まねで挑戦するも、量も硬さもバラバラ。仕掛け投入で餌だけ飛んでいく始末だった。関川さんは「それをすぐにできてしまったら、僕の立場がないから」と笑った。初ヘラはダブルヒットだった。その後、ウキが立った直後にクンと沈むが、沈み幅が小さかったのでアワセず見送った。その直後、グンと一気に沈んだ。これに即アワセでゲット。「最初のを見送ったのはいいね」と褒められたところで、気分よく終えたのだった。

◆円良田湖釣り事務所【電話】048・581・8511。入漁料800円、放流バッジがあれば600円、現場売り1500円。ボート2800円(放流バッジあり2600円)。桟橋は1日2100円、半日(午前11時~)1100円、女性、高校生までは、いずれも800円。営業時間は午前6時30分~(3月末日まで)。ワカサギは10月1日予約開始予定。