神奈川・山下橋「広島屋」(石井晃船長=62)で15日、束釣り連発のスゴ腕常連客、大下晶弘さん(45)のアジ釣りを取材した。

あいにくの雨だったが、「アジはこういうときのほうが釣れます」と大下さん。「カワハギ釣りが最も好き」というが、「カワハギは潮澄みで晴天の方がいいけど、アジは濁りが入って曇りのほうがいい」という。「曇りや雨だと魚が釣れる」という説もある。「科学的な根拠は分かりませんが、薄暗い方が魚の警戒心も低くなるのでは」と解説し、「実際に釣れた経験もあります」と経験則からも語ってくれた。

コマセアジは「縦の釣り」と大下さんは言う。「コマセ釣りのイメージは、コマセカゴを大きく振ってふわっと広範囲にコマセを広げて魚を集め、餌を同調させて釣るイメージだと思います。でも、湾奥のコマセアジは円筒の中で釣るようなイメージ。コマセカゴは大きく振らずシャープに振り、まいたコマセの中にハリスを通すイメージで釣っています」。

そのため、ロッドもこだわっている。「ライトゲーム用のロッドだと柔らかすぎなんです。バット部が硬く先が柔らかい方がコマセカゴを短いストロークでシャープに振れるので、自分はマルイカ用のサオが最適だと思っています」。

この日のポイントは本牧沖。「水深23メートルで下から3~4メートル。底が急激に落ちている場所もあるので、小まめにタナを取り直してください」と石井船長。これに大下さんは「着底したら根掛かりしないようにすぐ2メートル巻いて、そこでコマセカゴを振って、まずは3メートルで止めてみます」。

大下さんは左ハンドルのため、右手でサオを持ち、左手を添えてコマセカゴを振るが、その振り幅は10センチほどと短め。それを3~4回行うと、サオを海面と水平にして待った。「アタリがないときは、1メートルゆっくりサオを上げてみましょう」。すると、サオ先がビクビクと動いた。「来ましたね」。これが船中1匹目のアジとなった。

取り込む所作もムダがない。アジを手でつかんで外すと、餌のアオイソメを整え、ビシにコマセを入れると即座に投入。一連の動作は30秒もかかっていない。「数釣りは手返しの良さが重要。まず、基本的に船は風上に船首を向けます。また、自分は左ハンドルなので、左舷であればコマセのバケツはサオの左に配置しています。これならハリスは風下に向かうので手前マツリを防げるし、魚を取り込む際にサオを持ちかえる必要もありません」。

サオや仕掛けの長さも、手返しの良さを考慮して短くしている。「1・8メートルが一般的なサオの長さですが、自分は1・6メートル。仕掛けも市販品は2メートルが多いですが、1・7メートルです。細かいことかもしれませんが、その積み重ねが大切だと思います」。

結局この日、約5時間半で122匹を釣り上げ、見事束釣り達成! 「2カ月ぶりの釣りだったので心配したけど、なんとか結果を出せました」とほほ笑むと、「あまり難しく考えずに、釣り自体を楽しんでいただければいいと思います」と話した。